ITOI

頭出し:電波少年的放送局の62時間。
いくつになっても、馬鹿は馬鹿。

臨時更新で、その時その時の会話をお届け!

[綾戸智絵さんがやってきた!]
<第2回 (1年に200回のコンサート)>


糸井 若くなったのは、恋でもしてるんですか?
綾戸 まぁ、勝手に恋をしています。
ふたりの愛情が通ったということを
恋というのならば恋はしていないけど、
こっちからのだけ、なら、恋してますねぇ。
糸井 このところ、ぐっと。
ラクそうだよね。
苦しそうなところがほとんど見えない。
苦しみは、薬味程度になったよね。
綾戸 (カップ麺を食べて)あ、うまい。
うわー、ええ感じ。おいしいね。
糸井 うん。
この新製品、おいしいよね。
ただ、いま、日清の担当者さんがいらしてたけど、
「これ、何度も食べてくれるかどうかは
 まだわからないので・・・」
と、クールな言い方をしてましたよね。

たしかに、わざわざ
指名買いをするまでに至るのは、
どの商品でも、ほんとに難しいですよね。
音楽でも、きっとみんな、
「どれでも聴きまっせー」
って思っているんじゃないでしょうか。
綾戸 あぁ、いいこと言う。
そのとおり。
糸井 なんかいいじゃない、っていうところで
おしまいになっている通行人は
多いと思うんですけど、そこで
「アヤなんとかを買いたい・・・」って、
そこから、はじまるんですよね。
綾戸 「いやぁ、ファンです! オリトさん!」
まちがえられたりしてもええねん。
そっから、はじまるんねん。
糸井 まず、そこまでいくのも、大変だよね。
「ああいう人が、いるんだ?」
と思われるだけでも、大変だよ?

それは、綾戸さんが、
小さいライブをものすごくたくさん
重ねたから、できたんですよ。
年にどのぐらいやってました?
綾戸 もう数わからないぐらい。
200以上やった時もありますね。
糸井 その頃に綾戸さんが演っていた
一個ずつの会場って、
ジャズクラブだったりするから、
100人だったり200人だったりなんだよね。
100か所やっても、
100人だったら、1万人。
でも、たった1万人のその数を、
綾戸さんと社長さんが
信じたからできたんですよね。
綾戸 そう。
糸井 その頃、自分はネットをはじめたころで、
だめかもしれないけどやってみよう、
と思っていた時だったから、
綾戸さんも同じことを考えているんだ、
と感じたんですよ。
100か所やって1万人というのは、
公演がよくなかったらただの1万人だけど、
「ものすごくよかったよぉ!」ってなったら、
その後に爆発するポテンシャルは
10倍ぐらい大きくなるものねぇ。
綾戸 「おおきに!今日100人!
 うれしいわ!今度みなさん、
 3人ぐらいで連れ立ってきてね!」
そう、よう言ってましたわ。
糸井 それ、憶えてる。
終わったら必ず
レコードでサイン会をしてた。
確かに、音を持ってかえってもらうのは、
チラシを持ってかえってもらうより
数倍いいですよね。
ともだちに聴かせたりするから。
1年ぐらい、続けていましたよね。

ちょっと大きめのホールだと
「大きい!」って思ったもんね。
綾戸 オーチャードホール(渋谷BUNKAMURA)に、
はじめて出た時、感激しましたわ。
たくさんミュージシャンが出る中の
ひとりとして、出たんですけど、
「いいなぁ!こんなところで、
 できたらいいなぁ!」
そしたら、うちの社長が、
「そういう計画が、あるんだよ」
・・・そんなまさか、と思ってたけど、
半年後に、そこで演ることになったんだよね。

不思議なのは、半年後にそこで演っても
そんなに大きいとは思わなかったんです。
大きいは大きいよ?
でも、たった半年で、何かが変わった。

お客さんの半数以上が見えるし、
わたしは、あそこのホールは好きだなぁ。
隣の人に、イントロのたびに
「あの曲やであの曲やで!」
って説明している人のしぐさや、
そういう世間がよく見えるのが嬉しいね。
糸井 もう大きさに憧れを抱くことはないよね。
いまは、どうなりたい?
綾戸 何割ぐらい若いお兄ちゃんが
来てくれるか、かなぁ・・・(笑)。
糸井 しょうがねぇなぁ(笑)
綾戸 もう、怒られるかな(笑)。
おばちゃんが来ていても、
「長男、何歳ぐらいかなぁ」とか。
そのほかにも、
「この中で、恋がうまれるんじゃないかな」
とか、そういうことを思うことはあるよ。
自分の予測しないことで進んできているから、
自分の脳味噌では
予測もできないことが起こるんじゃないか、
と思っているんです。
糸井 たとえば、アメリカに関して言うと、
綾戸さんって、アメリカでジャズをやっていて
そこから来たという出身があるから、
アメリカに行くということに関しても、
原寸大で考えられますよね。
こちらがわから
「アメリカに行くんだ!」
と思っているんじゃなくて、
「それも、あるかもね」ぐらいに思うという。
綾戸 そうですね。
確かにアメリカでジャズは生まれているけど、
日本でもやっているから、充分楽しいです。
糸井 そうですよね。
メジャーリーグもあるけど
日本の野球もある、っていうぐらいには
もうなっていますよね。
あっちにはいい選手もいるから、
やってみたい、という程度の原寸大。
綾戸 そうそう。
糸井 若いお兄ちゃんがいたほうが、
っていう言い方は、なるほどと思った。
「もっと掴みたい!」みたいな。
握力を強くしたい、みたいなね。
綾戸 そうなんです。
いままで会えなかったような職種の人と
会えることが楽しみなんです。
予想もしない人と会えるのは、
宝くじにあたったようなもんでっせ。
だから、若いお兄ちゃんというのも
言葉のたとえですね。
自分がこのまま進んでいたら
絶対に会えないような人に
会うというのは、音楽のおかげでしょ?
それはもう嬉しいですよ。
糸井 自分に二重丸つけながら歩いてるでしょ?
ここが足りないとか思っていないで、
「よし、よくやった!ここもやろう!」
って、元気よくやっている気がする。
曲の増やしかたも、気持ちがいいですね。


(※つづく)

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2002-05-30-THU
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