零士 |
自分の仲間の中でも、
チームリーダーやライバルよりも
上に早く行きたがっているやつもいるから、
そこは内乱になってしまうわけで、
チームを保つのは、むずかしいですよ。
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糸井 |
なるほどね。
零士さんの世界は、
上っていうものが、よく見えるじゃないですか。
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沼澤 |
売り上げとかね。
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糸井 |
生活が上とか。
このブランドよりこのブランドが上とか、
ぜんぶタテの目盛りがついているじゃないですか。
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零士 |
ついてますね。
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糸井 |
音楽って、タテの目盛りがすくない。
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沼澤 |
うん。まったくないかもしれない。
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糸井 |
たとえば沼澤さんが、ドラム叩いている人間として
すっげえ若いやつで
ドラムのうまいやつを見つけたとしたら、
「すげぇ」って言えるもんね。
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沼澤 |
ちょっとイイのがいるから、見てよ!
ってなっちゃう。
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糸井 |
プログラムの世界もそうみたいです。
若くて社長になっちゃった人がいて、
プログラマーなんですけど、ぼくが
「よく年輩の人たちがついてきましたね」
ときくと、
「プログラムの技術があると、
まずそこは無条件にリスぺクトしますので、
年上とか年下とかが関係なかったですね」
って言うんです。
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沼澤 |
技術的にも芸術的にも
すごいやつっていると、嬉しいですよ。
「うわ、すごいなきみ!」
・・・その時に、彼と自分との
収入なんてまず考えなくて、
君のプレイで自分の心が動いたという
その時点で、イエイー! で、終了、という。
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大貫 |
そうだよね。
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零士 |
それはわれわれサービス業とは違いますね。
近くにおんなじような店ができたら、
それは当然商売敵ですから。
メシ屋でもそうですよ。
きっと、寿司屋もラーメン屋もみんなそうですよ。
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沼澤 |
具体的なお店があるから、そうなりますよね。
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零士 |
そうですよ。
近くにできたら、
ふざけんじゃない、あそこがつぶれたら
そこの客がぜんぶうちに来る、そう思います。
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沼澤 |
それはないよね。
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糸井 |
ある人も、いるとは思うけどね。
音楽をやる理由って、いろいろだから。
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沼澤 |
大貫さんの音楽に
ぼくらが惹かれるって、
そういうことじゃないですか。
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大貫 |
関係ないほめかた(笑)。
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零士 |
ふふふ。
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糸井 |
(笑)大貫さんのその速度、いいねぇ!
零士さんの話もちゃんとおもしろがってるし。
また、零士さんは零士さんで、
大貫さんたちの話を、おもしろがれるんだね。
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零士 |
おもしろいですよ。
ぼくら、何でそんな人の名刺持ってるの、
っていう方々と、ひょんなことから
お知り合いになる時もあるんです。
それがおもしろい。
朝方にうどん食べている時に
横に座っていた方にヒジがあたった、
そんなきっかけで仲良くなった
次の日、お店の前にとんでもない
デカいクルマがとまるんです。
ホテル王。うどん食ってた人だったんです。
・・・みたいなことですよ。
だけど、ぼく、今のミュージシャンの話は、
ぜんぜんわからないですね。
ぼくは35年生きてきていて。
商売敵にならないって、ありえないから。
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糸井 |
(笑)
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零士 |
例えば政治の世界はホストの世界と似ているし、
同じ分野なら片方がつぶれたほうがいいと思うし。
いいものがすばらしいというだけというのは・・・。
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糸井 |
そうかー。
零士さんはトップだから聞けるけど、
ミュージシャンのその話っていうのは、
もうすこし下のランクのホストだとしたら、
「そんなこと、あるかよ!」
「きれいごと、言うなよ!」
と言いたくなる話なんだ。
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零士 |
でしょうね、きっと。
「そんなんでいいのか!おかしい!」とかね。
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糸井 |
でも、零士さんの場合、
「それは・・・驚いたぁぁ!」
っていう。
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大貫 |
音楽とか絵をかくとか
何でもそうかもしれないけれど、
「そのことは、その人しかできない」
ということなんですよね。
唯一無二。
ピカソでもみんな、ひとりしかいない。
極めた人は、みんな、ただひとり。
そのことでたまたま
お金ができる人もいるんだけれども、
たとえばモジリアニみたいに、
もうお金がなくて血をはいて、っていうあとに
あんなに評価されていくという。
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糸井 |
結局はあの作品はお金を稼ぎ出したわけだもんね。
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大貫 |
すごいですよ。
ほんと悲惨な人生だったのに。
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糸井 |
稼いだお金とその人が重なることがなかったという。
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大貫 |
ええ。
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沼澤 |
クラシックの作曲家の方に、
そういう人が多いですよね。
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大貫 |
わたしたちのやっている商業音楽にも、
やっぱり、いまのような話は、ありますよね。
すごい長いキャリアをやっていて、
いつもチャートにはのらないけれども、
あらゆるミュージシャンから尊敬されていて、
その人がいるから若い人が育つ、
っていうのもあるし。
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沼澤 |
チャートに乗ったほうが
いいかどうかについては、
その人たち本人は・・・
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糸井 |
考えないはずはないと思うんです。
たくさんの人にきかせたいとか、
遠く、広くきかせたいとか。
遠くが見えないから近くが見えないとか、
もちろん、欲望のかたちはある。
だけど、タテ軸以上に、
ヨコ軸に強欲なんですよ、音楽の人たち。
作品のためには、
なんて図々しくもわがままな、
人を人とも思わない人なんだ、と
驚く場面に遭遇する時には、
ぼくは零士さん側として見ているかもしれない。
視点がいろいろ、あっちこっちに動くんですよ。
その職業にいない人の中にも、
語りたがる人もいるだろうし。
評論家の中にも、
一流とそうじゃないものがありますし。
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沼澤 |
そうなんですよ。
評価を読むと、はっきりしているのは、
リスぺクトを持って感想を書いているか、
自分の立場が評価をしてやっている、というか。
そのどちらかなんです。
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糸井 |
それは、ファンもそうだよね。
買ってやってる、っていう人と、
わぁ、うれしい!っていう人と。
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