祖父江 |
絵ってなんか不思議なもんで、
描いてる本人ってわりと、
端がちょっと破れたりとか、
手の跡ついたりするのも
その作品の中に入ってくじゃないですか。
|
MM |
うん、ぜんぜん平気ですね。
|
祖父江 |
で、こう、1個できあがったとなると、
今度は「お手を触れないで」
とかになってくるじゃない?
あのへんが微妙ですよね。
|
MM |
うちはもう、若い子が多いから触りまくり。
デートしてる男の子が女の子に、
触りながら説明してんのね。
さも自分が描いたかのように(笑)。
|
祖父江 |
指さすんじゃなくて、押さえながら(笑)。
|
MM |
そう、押さえながら(笑)。
100年ぐらいたったらね、
たぶん手の跡が浮き出てくるから、
きっとものすごい数だと思う。
|
祖父江 |
こないだ指紋採集セットもらったんですよ。
いろんな人の指紋が出てくるかも。
|
MM |
それは、粉でやるやつ?
|
祖父江 |
そう、粉でコソコソコソっと。
でも、だいたい絵っていうのって、
永遠にそのままであるのって、
変な感じがするよね。
やっぱり、だんだんと、ね。
|
MM |
自分が描いたものって、
そんなに大したもんだと思ってないでしょ?
|
祖父江 |
自分ではね。
MMは大してるんだけどね。
|
MM |
だから梱包とかもしないで生のまま丸めてね、
車に乗せて運んでたりしたんだけど、
業者さんが入るようになってからは、
業者さんが怖がるんですよね、その状態を。
だから梱包するようになったんですよね。
|
祖父江 |
なるほど、梱包するのは業者さんへの思いなんだ。
作品って、描いちゃったあとって、
どんな感じなの?
|
MM |
描いちゃって展覧会に出すまでは、
家に置いてあるんですよね。
そこまでは自分のものって感じなのね。
で、展覧会に出して展示した段階から
自分のものじゃないって感じ。
終わったら家に帰ってこないで倉庫に行くの。
そしたらもう、ウチの子じゃないって感じ。
|
祖父江 |
行ってらっしゃい、って?
|
MM |
もう、よその子。
|
祖父江 |
よその子になるんだね。
描いてる途中でよその子になることって、
あるのかな?
|
MM |
ないね〜。
|
祖父江 |
描いてるときはやっぱり、よその子じゃないのか。
|
MM |
なんかね、よその子どころかね、
んー、自分の子でもないって感じ。
|
祖父江 |
自分の子でもない・・・はぁ・・・。
|
MM |
自分自身?
|
祖父江 |
あんまり、所有とか、そういう発想でいくと、
よくないっていうことかな?うん。
|
MM |
だよね。
でも、絵には絵の運命っていうのがあって。
ひょっとしたらこの子は
焼ける運命にあるかも知れないし、
もしかして力があれば、
どうしてたって残るもんは残るでしょ?
そんな感じ?
|
祖父江 |
そんな感じね、うん。
|
MM |
絵にもね、やっぱり運命があるね。
|