みんな、だれかのコ。

みんな、だれかのコ。

糸井
山崎さんからは、
たまたま中間報告のメールをいただいたりもしたけど、
犬や猫と、避難所がつながるとは思いませんよね。
山崎
私どもの「全国避難所ガイド」では、
避難所に意識を向けていただきたいのですが、
「ドコノコ」アプリはまさに、
避難所を、ふだんから意識できるアプリですよね。
避難所がここにあるよ、という意識づけができれば、
何かが起きた時にも、すぐ行動に移せますから。
そういうのが一番だと思うんです。
防災系のアプリって、
災害が起きたときには使いますけど、
日常的には使いませんからね。

糸井
ああ、そうですね。
山崎
「ドコノコ」のような、
ふだんから使えるアプリの中に
「避難所」という項目があるだけで、
「あ、ここにも避難所あったんだ。
 こっちにも登録しようかな」
と思っていただけたらうれしいです。
糸井
それがよかったんですね。
僕が、都会のケースで面白いなと思ったのは、
「どの避難所にしようかな」って選べるんですよね。
自宅から何キロ圏、といった数字だけで
避難場所が決められるんじゃないんですよね。
たとえば、火事なんかのケースだと、
避難所の近くが燃えていることだってあるわけだし。
ここが避難所だ、という意識を持てるのは、
すごくよかったと思いますね。

山崎
避難所の指定をこうしなさい、
という法律での義務づけができたのも、
じつは去年からなんですよ。
糸井
それまでは、なかったんですね。
山崎
なかったんです、今まで。
法律で決められていなかったから、
自治体が、まさに自分の自治のために
やっていただけで、
国が音頭を取ってなかったんですね。

糸井
僕らが「全国避難所ガイド」さんと
タイアップができるってわかってから、
このアプリを使えば、
日本のことを考えられると思ったんですね。
このアプリを見てみると、
たとえば、山の中には山の中なりに
避難所があることもわかりました。
これだけ網の目的に避難所があるということは、
逆に、日本がいかに危なっかしい場所なのか、
ということでもありますよね。
そしてさらに、その危険性を考慮しているという、
意識のある土地なんだともわかりました。
山崎
はい。
糸井
自分へのケアもしなければならないし、
避難所に犬や猫を連れて行くのかについての
意見交換を一緒にできる時期が来たんだ、
と思って、それはよかったなと思ったんです。

僕は、「ドコノコ」を外国へ伝えていく時に、
身近な場所を住所代わりにするという考え方も、
外国に輸出できないかなと思うんですよ。
たとえば外国だったら、近隣のランドマークを
中心にして登録することになると思うんです。
自分の住所を喜んで伝えたがる国は、
そう、多くはないと思うんですね。
エリアの取り方について、
行政区とは限らないということを、
みんながもっと、考えられるといいなと思うんです。
日本の「全国避難所ガイド」という考え方を、
伝えられるといいなと思うんですよね。

山崎
それはいいですね。
糸井
いまはもう、「全国避難所ガイド」も
だいぶ広まったんでしょう?
山崎
いま、ダウンロード数が30万ぐらいですね。
糸井
ああ、30万ですかぁ。
まだ少ないなぁ‥‥。
山崎
私たちも、いろいろ新しいサービスを始めていきます。
たとえばいま、災害警報が出たときに、
町内放送で流したり、テレビで伝えても、
あまり、避難しないという傾向がありますよね。
それはおそらく、「自分は大丈夫」という
意識がどこかにあるからなんです。
私たちが企画しているのは、災害警戒地域にいて、
「全国避難所ガイド」を持っている人に対して、
「あなたの位置が危ないです」という、
プッシュ通知がじかに届くシステムを作っています。

糸井
いいですね、それは。
山崎
たとえば、富士山の噴火なんかもよく言われますが、
山登りしている人がアプリを持っていたら、
火山性微動が発生したときに、
避難経路を確認するように通知を出せるんです。
糸井
それは言えますね。
山崎
せっかく避難所のアプリを作ったので、
その他のサービスを加えて、
もっと便利に使えるようにしたいです。
まさに、いま開発していまして、
そのサービスは富士山の山開き前に
使えるようにしようと動いています。
糸井
それはいいですね。
山崎
あと、先日の熊本地震は活断層地震でしたよね。
「全国避難所ガイド」の次のバージョンでは、
日本全国の活断層の位置を表示するようにします。
そうすると、近くに活断層が
いっぱいあるんだという意識ができるので。
糸井
そうですよね。
意識を持つことが、だいじですよね。
山崎
そうなんです。
糸井
あの、ちょっと話は違うかもしれませんけど、
きのう僕、公園で逆上がりができたんですよ。

一同
(笑)
糸井
その前にやった時には、できなかったんです。
笑っちゃうでしょう?
「できるに決まっている」と
思ってやったら、できなかった。
でも今回は、できなかったなりに
「こうじゃないかなぁ」って
思いながらやってみたら、できたんですよ。
ただ、それだけのことなんですけど(笑)
山崎
いえいえいえ(笑)
糸井
知っているか知らないかだけで、
全然違うんですよね。
その意識の持ち方が、たいせつなんです。
何もできなかったなりに、これができたとかね。
山崎
そうですね。
糸井
だから極端にいうと、
ダウンロードしなくたって、
「全国避難所ガイド」っていう
言葉を知っているだけでも、
意味があるんだよと言いたいですね。
あとは、「ドコノコ」というアプリについても、
自分が面倒を見ていない犬でも猫でも、
みんな、どこかのコなんだよって。
山崎
なるほど、なるほど。
糸井
だれかのコで、どこかのコなんだよねって言いたいです。
無名の犬で、だれも面倒を見ない犬なんか、
本当はいないんだ、という願いが、
「ドコノコ」には入っているんですよね。

山崎さんには、これからもまた、
お手伝いいただくことや、お知らせすることが、
いろいろあるかと思いますが、よろしくお願いします。
どうもありがとうございました。
山崎
ありがとうございます。
よろしくお願いします。

(以上で山崎佳一さんと糸井重里の対談はおしまいです。
 デビューしたばかりの「ドコノコ」を、
 どうぞ、おたのしみくださいね。)

2016-06-07-TUE