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大学に入ってすぐ、でした。
貧乏学生だった生物学科の僕は
バス・(ぼっとん)トイレ・台所・土間・玄関共用の
4畳半が10室、5室ずつ2列に
牛舎の様に並んでいる1部屋に下宿しました。
で、ある日差しの暖かい春と初夏の中間の日和、
「いい天気だな〜」などと思いつつ
風呂のミニボイラーの置いてある脇の
台所で歯を磨いていました。
何か後ろで音も無い気配がしました。
下のほうでした。
何気にそちらに目をやると。
蛆。
蛆の行列。お引越し。
何十匹という蛆が一団となって
細いラグビー球形を組んで
「わっせ、わっせ」とばかりに
こちらを目がけて
ゆっくりとしかし意外に速く這って来る。
ビビりましたが好奇心が湧いて
近くに寄って横から見てみる事に。
しゃがむ。
すると、僕が幼い頃に我が家のぼっとんで
たまに見かけた白いヤツと違い
1匹1匹のカラダが透き通っていて
ナカがウニョウニョってのが透けて見える。
更に立ち上がり
目を離して集団の後ろを見ると
濡れている。
「どこから来たのかなー」と
土間についた濡れた後を追うと
風呂場の脇を通り抜け、木戸の向こう、
ぼっとんの中、モリモリさんの壷の中から。
いやあ、その時はまいりました。
え、下宿ですか。
それからじきに大家さんが簡易水洗にしちゃったんで。
4年間ずっと住んでましたが
もう連中とは会えませんでした。
ちょっと残念でした。面白い見世物だったのに。
(すいみん) |