第55回 海野和男さんの虫の写真集。

この「虫博士たち。」で、
何度かご登場くださった昆虫写真家の海野和男さん
その海野さんの昆虫写真集が発売され、
出版者の担当編集者さんから写真集が届きました。
『デジタルカメラで撮る
 海野和男昆虫写真 -wild insects- 』


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(帯の文章は糸井重里です。)

オールカラー144ページ(B5判横)
2,600円(ソフトバンク クリエイティブ刊)
【amazon.co.jp】  【SBCr shop】

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虫の解説だけではなく、撮影したカメラやレンズについて
くわしく載っています 。


さて今回、本を送ってくださった編集者さんとは、
「ほぼ日」に海野さんを
ご紹介くださった方でもあります。
その編集者さんから、
「今回、海野さんの写真集が発売された記念に、
 実際にぼくたちも虫の撮影に挑戦して
 思い出作りをしてきました!
 海野さんに写真も見ていただいたので、
 その様子を送りますね。」
とのことで、
本日は、担当編集者さん自らの
夏休み体当たり企画をお送りしたいと思います。
写真集の性格上、カメラの話もたびたび出てきます。
この夏、虫を撮りたい!という方はご参考にしてくださいね。
では、どうぞ〜!



「虫博士たち。」をご覧の皆さまこんにちは。
『デジタルカメラで撮る海野和男昆虫写真』の
担当編集をやりました斉藤&西尾と申します。
2人ともこのような本を担当しながら、
まじめに虫の撮影に挑戦したことがございません。
いや、きらいじゃないです、虫。
撮ったこともあるんですよ、たまには。
ただ、集合時間と場所を決めて、いざ!
という経験はなかったわけです。

そこで、今回、
海野さんの写真集を出版したのをきっかけに、
東京都内に撮影に行ってきました!
青山に程近い六本木七丁目に集合。



集合時間は午後1時。
「午後」です、「午前」1時じゃありません。
「虫取りなんだから早く起きろ! 根性が足らん!」
と、虫撮りのプロたちに叱られそうですが、
梅雨も明けた真夏の炎天下、それも真っ昼間。
早朝よりも気合と根性を求められ、
スタート前から、やや後悔の念に襲われる二人。
でも、意を決して公園奥の藪に突入した途端、
虫の撮影では、基本の基本ともいえる必需品、
「虫除けスプレー」すら忘れている、
ド素人2人を蚊の団体さんが歓迎してくれました。



そんな素人ながらに苦労して撮った写真の数々。
やっぱりここは、
その写真を評価してもらおうと
(やっぱり褒められたい気持ちも‥‥)、
虫の写真のプロフェッショナル、
海野先生のところへ行ってきました。


斉藤
&西尾
海野先生、ぼくらの写真いかがでしょう?
(ちょっと自信あり!)

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海野 あ、アオスジアゲハの交尾。これは珍しい。
東京にはアオスジアゲハって
たくさんいるんだけど、
交尾してるのは珍しいなぁ、
ボクも一回くらいしか見たことない。
斉藤
&西尾
あ、珍しいんですね!
いや、ぼくらも、
なかなか良い写真が撮れたと思ったんですよ、
実は。
(さらに自信満々に!)
海野 ‥‥でも、ピントが浅いね。
かろうじて眼には合ってるけど。
これは真横から撮らないと。
せっかく交尾してるんだから2匹とも
ピントが合ってないとね。
あ、F2.8。ぜんぜんダメだね、
もっと絞らないとピント合わないよ。
斉藤
&西尾
‥‥‥はい(自信はもろくも消失)。
海野 感度は、ISO200か。カメラ何?
キヤノンの「Kiss N」?


▲Canon EOS Kiss Digital N

だったらISO400まで上げて、
シャッタースピード1/80秒くらいまで下げても
ブレないから、F5.6くらいまで絞って、こう、
2匹がレンズに対して同じ距離にくるように
フレーミングしてだねぇ・・・・。
もったいないね、珍しいのにね。
ちょっと残念だね。はい、次。
斉藤
&西尾
あ、は、はい、次はこれです!
お手柔らかにお願いします‥‥。
海野 若いナツアカネだね。
アカトンボ。

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秋になると成熟して赤くなるの。
夏の間は水辺だと暑いから、
餌もたくさんいる雑木林とかにいて、
秋になったら産卵のために水辺に戻るんだね。
水田みたいな浅い水辺が好きみたい。
斉藤
&西尾
あの‥‥、写真的にはいかがでしょうか?
海野 ん? 白飛びしてるね、枝が真っ白。
ピントはまぁいいかな。
こういうときは、
マイナス補正かけてやんないとダメよ。
斉藤
&西尾
なるほど〜!
(やっぱりド素人でした‥‥トホホ)
では、これはどうでしょう?

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海野 ミンミンゼミね、木の汁を吸ってる。
このストロー状の口はね、
中に管が入ってて、二重になってるの。
中にあるほうの口を木の幹に刺してる。
これ、鳴いてなかったでしょ?
斉藤
&西尾
はい。
海野 うん、汁を吸ってるときは鳴かないからね。
それに鳴くときは翅をちょっと開くのね。
だから写真見ると、
鳴いてるか鳴いてないかわかるんだよ。
それに鳴いてるのは直ぐ逃げるから、
鳴いてないのを見つけて撮るほうが簡単なの。
斉藤
&西尾
ほほ〜。
それにしても
ミンミンゼミって声でかいですよねー。
海野 ちょうど人間に聞こえやすい帯域の声なんだね。
電話ってさ、周波数帯域の上下を
ある程度カットしてあるじゃない?
言葉が聞き取れればいいぐらいの帯域に
絞ってあるわけ。
ミンミンゼミの声はそこに合ってるんだろうね。
逆にね、大きく外れてると全然聞こえない。
ヨコバイの仲間とかね。
斉藤
&西尾
ヨコバイ? ヨコバイって鳴くんですか?
海野 うん。カメムシとかも鳴いてる。
聞こえないけどね。
セミの仲間はね、お腹のとこを動かして鳴くの。
たいていの種類は鳴いてるんじゃないかな。
斉藤
&西尾
でも聞こえない、と。
海野 そう。だからね、虫が止まってる枝に
センサーを付けてね、
枝に伝わる振動を拾うわけ。
そうやって人間の耳にも
聞こえるように変換すると、
鳴いてるのがわかる。鳴き声だけじゃなく、
足音とかも聞いてみると面白いよ。
次は何?
斉藤
&西尾
あ、はい。これです。

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海野 コオロギね。
幼虫だから、
何コオロギかちょっとわかんないね。
こっちはオンブバッタ。

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終齢幼虫だね。大人になる直前ね。

あ、これきれいだね、
アオドウガネじゃないかな。

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昔は東京には少なかったんだけど、
温暖化の影響かな。
関東以南に棲むコガネムシなんだけど、
ずいぶん鮮やかな色だなぁ‥‥、
ちょっと図鑑見てみようかな。
あ、そうだね、お尻に毛が生えてるから、
アオドウガネだね。
それにしてもずいぶん大胆な構図だね、
この写真は。
斉藤
&西尾
葉っぱを食べまくってましたよ。
近くに3匹ぐらいいて。
捕まえたらウンチされました。
海野 たくさんウンチしたでしょ、ベタッって。
それなら、アオドウガネ。
斉藤
&西尾
う〜ん、勉強になります。
海野 ほかの写真は、
ハラビロカマキリの幼虫に、アブラゼミか。

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斉藤
&西尾
このアブラゼミ、ぜんぜん動かなくて、
近くに抜け殻があったんですよ。
海野 あるね。たぶん明け方に羽化したんだろうね。
これ、本人の抜け殻だと思うよ。
羽化した後は3〜4時間じっとしてるからね。
斉藤
&西尾
先生、最後の一枚です。

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海野 あ、ムシヒキアブ。ハエを食べてるね。
これはもっとダイナミックに撮らないと。
斉藤
&西尾
・・・ムリです。すぐ飛んでいきました。
海野 いや、150mm付けてんでしょ、撮れるよ。
あ、これは「Caplio」で撮ってるのか。


▲RICOH Caplio GX8
 レンズ前1cmまで寄れるコンパクトカメラ。
 海野さんもご愛用。


コンパクトカメラじゃムリだよ、
150mmでいっぱいまでレンズ繰り出して、
グッとよって捕食の様子を
強調して撮らないとねー、うーん、いかんね。
斉藤
&西尾
このアブ、
見た目もすごく恐いし(ムリです)‥‥。
つ、次がんばります。
海野 いやー、それにしても
ハエを捕まえるんだからすごいよね。
僕らだってさ、
手をパッて動かしても取れないよ、
ハエなんて。
ハンターだね、優秀なハンター。
アフリカの大草原でライオンが
シカを捕らえるみたいなことがさ、
都会の真ん中で行われてる。小さいけどね。
こういうのを見るのが
昆虫撮影の楽しみのひとつだよね。


斉藤
&西尾
はい、ほんとにそうですね。
撮影の腕はともかく、
昆虫撮影でいろんな人にそういうシーンに
出会って欲しいですねー。
海野 ‥‥まあでも、
アオドウガネのお尻とミンミンゼミの写真は
いいんじゃないかな、うん。
よく見るとブレてるけどね。。
斉藤
&西尾
ありがとうございます!!

最後に海野さんに褒められ、
ちょっと安心した斉藤&西尾でした。

もちろん写真集は全部、海野さんの
カッコいい写真です。
ぜひみなさんにお手に取ってもらい、
写真集を見て、虫にも、虫の撮影にも
興味を持ってもらえるといいなと思います。
(斉藤&西尾)



やっぱり、自分で昆虫を撮るのは
難しいようですね〜。
でも、なんだか楽しそうです。

海野さんの、
「アフリカの大草原でライオンが
 シカを捕らえるみたいなことがさ、
 都会の真ん中で行われてる。小さいけどね。
 こういうのを見るのが
 昆虫撮影の楽しみのひとつだよね。」
という言葉に、
虫を観察するということの、
楽しさの要素が詰まっているように思えます。

『デジタルカメラで撮る
 海野和男昆虫写真 -wild insects- 』
には、「虫博士たち。」の中で、
海野さんと糸井重里が対談したページも
抜粋して掲載されているんですよ。

8月も残りわずかですが、
まだまだ虫と遭遇しやすいこの時期に、
昆虫写真にチャレンジしてみては
いかがでしょうか?
では、また来週〜!

<お知らせ>
次回で「虫博士たち。」は、最終回となります。




今回登場した虫たちをご覧になりたい場合は、
こちらをクリックしてどうぞ。
(検索エンジンgoogleのイメージ検索を利用しています。)

アオスジアゲハ ナツアカネ
ミンミンゼミ コオロギ
アオドウガネ ハラビロカマキリ
アブラゼミ ムシヒキアブ


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2006-08-20-SUN



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