Drama

第8回 ひとに伝えたい理由(補足版)。


こんにちは。
沼澤尚さんとdarlingのこの対談は、
次回が最終回になりますよー。
もっとも白熱した会話が明日に掲載されるので、
かなり楽しみにして待っていていただきたいという
その前に、今回は、補足のような感じでお届けします。

第7回で、「伝えること」に関しての
まじめな話をしていましたが、今日はそれを受けて、
「伝えたいこと」についての話題になっていくよ。
補足っぽいとは言え、楽しめる内容だと思います。


沼澤 ひとに伝えることを、糸井さんは、
自分でやるべき仕事だととらえていますか?
糸井 ぼくにとっては、ゲームですね。
伝わるという状態があるのを知ったのに
そこに行かないの?俺は・・・というか。
まだ、課題としての形が見えないから、
考えてみたいんだろうなあと思います。

それは、何もわからないかに見えた人が
一瞬だけでもとてもいい文章を書けたことが
答えになるのかもしれないし、あるいは、
誰もが惹きつけられる、ぼくにとっての
「ザビエルのカステラ」を見つけるのが答えか、
あとはぼくの狙っていることを
他の誰かがやってくれたのを見るだけでも
いいのかもしれないし・・・
答えの出方がまだ見当つかないので、
だから今のところは忘れないどこうと思うのかな。
一刻も早く忘れたいというのは、まあ、
一生忘れないぞということだと思うし・・・。
沼澤 そうですね。話してる時点で
興味があるということだろうから。
糸井 やっぱさあ、これをやれないようじゃ、まだで、
ザビエルを見なさい、みたいな気持ちもあるし。
でも、ザビエルからこぼれた奴も多いんだよね。
よく考えたら、それも忘れちゃいけないなあ。
沼澤 それは使命感みたいなもの?
糸井 イチローが3割でいいよと言われても
もっと打てるよ、やらないと気持ち悪い、
みたいなのと似てるのかな〜、こういうのは。
「他にやってくれる人がいるならそれでいいけど、
 自分しかいないとなると、やるしかない」とか。

例えばさっきの話でいったら、
結局伝わらないもんだったら、
世の中って、やな場所じゃない?
そうなると、使命感みたいな言葉に近い
思い入れになるのかもしれないけど。
沼澤 嫌だと思ったり、いいなと思ったり、
それはどっちか思ったほうがよくて、
たぶん自分としては、「どうでもいいや」とか
そういう言葉が、いちばん嫌ですね。

ぼくは、自分のしていることを
判断される位置にもいるので、そうすると、
どちらかと言えば、印象づけたいと思います。
「いいじゃん」なり「自分には合わない」なり、
はっきりした意見が出るほうが、
「・・・よくわかんなかったなあ」
と言われるよりはいいなあと思います。
ぼくが「どうでもいい」と思う時だって、
やっぱりそれは興味がなくなる場合だから。

嫌だなってはっきり思ったあとに、
「そうは、したくない」というので
自分の価値にもなっていくとぼくは思うので、
だから嫌だとか違うとか思うことは、
それはそれでぼくには大切というか。
糸井 その足りなさが、ものすごく鮮明にみえちゃえば、
たぶん使命感にならざるをえないんですよね。
既にだめなところが見えてしまったんだから、
その時点から、じゃあ、お前だったらどうする?
・・・そうやって、訊ねられているんですよね。

ぼくは、欠点だらけのものって
全然好きなんです。
沼澤 ぼくもそうですよ。
糸井 欠点だらけでも、それをやってる理由があれば、
それは何かのおみやげをこっちにくれますよね。
お互いにおみやげを持ちあって、
何をもらったかは分からないけど、
何かを渡しあったよねえ、みたいな、
ぼくが人に会うのが好きなのは、そこですよね。

それの敵は何かと言うと、
簡単にまとめあげてしまうことですよ。
ぼくがプレゼントとして出した料理が、
ぜんぶ、ありあわせのつまらないおかずに、
相手の会話の「返し」で変えられてしまうと、
何だ!と思います。
そういう人は、会話における
「やらずぶったくり」というか、
悪意がなくても、何もしてくれていない・・・。

まあ、そんな人に会うのは稀で、
だいたいは、どんな人に会っても、
けっこういいんですよー。
やっぱり、いちばん最悪なのは、
半端なプロだと思っている奴かなあ・・・。

そのあたりとの会話がなくなったら、
ぼくは毎日幸せですね。


(「どうでもいい」が嫌だというのは、すごく
 沼澤さんらしいなあと思いながら聞いていました。

 今回は、ちょっと短めですが、
 そんな中で、対談は明日につづきます。待っててね。
 ちなみに、明日の最終回は、このシリーズの中で、
 もっともおもしろいぐらいの内容だ、と思いますだ)

2000-12-11-MON
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