沼澤 |
ひとに伝えることを、糸井さんは、
自分でやるべき仕事だととらえていますか? |
糸井 |
ぼくにとっては、ゲームですね。
伝わるという状態があるのを知ったのに
そこに行かないの?俺は・・・というか。
まだ、課題としての形が見えないから、
考えてみたいんだろうなあと思います。
それは、何もわからないかに見えた人が
一瞬だけでもとてもいい文章を書けたことが
答えになるのかもしれないし、あるいは、
誰もが惹きつけられる、ぼくにとっての
「ザビエルのカステラ」を見つけるのが答えか、
あとはぼくの狙っていることを
他の誰かがやってくれたのを見るだけでも
いいのかもしれないし・・・
答えの出方がまだ見当つかないので、
だから今のところは忘れないどこうと思うのかな。
一刻も早く忘れたいというのは、まあ、
一生忘れないぞということだと思うし・・・。 |
沼澤 |
そうですね。話してる時点で
興味があるということだろうから。 |
糸井 |
やっぱさあ、これをやれないようじゃ、まだで、
ザビエルを見なさい、みたいな気持ちもあるし。
でも、ザビエルからこぼれた奴も多いんだよね。
よく考えたら、それも忘れちゃいけないなあ。 |
沼澤 |
それは使命感みたいなもの? |
糸井 |
イチローが3割でいいよと言われても
もっと打てるよ、やらないと気持ち悪い、
みたいなのと似てるのかな〜、こういうのは。
「他にやってくれる人がいるならそれでいいけど、
自分しかいないとなると、やるしかない」とか。
例えばさっきの話でいったら、
結局伝わらないもんだったら、
世の中って、やな場所じゃない?
そうなると、使命感みたいな言葉に近い
思い入れになるのかもしれないけど。 |
沼澤 |
嫌だと思ったり、いいなと思ったり、
それはどっちか思ったほうがよくて、
たぶん自分としては、「どうでもいいや」とか
そういう言葉が、いちばん嫌ですね。
ぼくは、自分のしていることを
判断される位置にもいるので、そうすると、
どちらかと言えば、印象づけたいと思います。
「いいじゃん」なり「自分には合わない」なり、
はっきりした意見が出るほうが、
「・・・よくわかんなかったなあ」
と言われるよりはいいなあと思います。
ぼくが「どうでもいい」と思う時だって、
やっぱりそれは興味がなくなる場合だから。
嫌だなってはっきり思ったあとに、
「そうは、したくない」というので
自分の価値にもなっていくとぼくは思うので、
だから嫌だとか違うとか思うことは、
それはそれでぼくには大切というか。 |
糸井 |
その足りなさが、ものすごく鮮明にみえちゃえば、
たぶん使命感にならざるをえないんですよね。
既にだめなところが見えてしまったんだから、
その時点から、じゃあ、お前だったらどうする?
・・・そうやって、訊ねられているんですよね。
ぼくは、欠点だらけのものって
全然好きなんです。 |
沼澤 |
ぼくもそうですよ。 |
糸井 |
欠点だらけでも、それをやってる理由があれば、
それは何かのおみやげをこっちにくれますよね。
お互いにおみやげを持ちあって、
何をもらったかは分からないけど、
何かを渡しあったよねえ、みたいな、
ぼくが人に会うのが好きなのは、そこですよね。
それの敵は何かと言うと、
簡単にまとめあげてしまうことですよ。
ぼくがプレゼントとして出した料理が、
ぜんぶ、ありあわせのつまらないおかずに、
相手の会話の「返し」で変えられてしまうと、
何だ!と思います。
そういう人は、会話における
「やらずぶったくり」というか、
悪意がなくても、何もしてくれていない・・・。
まあ、そんな人に会うのは稀で、
だいたいは、どんな人に会っても、
けっこういいんですよー。
やっぱり、いちばん最悪なのは、
半端なプロだと思っている奴かなあ・・・。
そのあたりとの会話がなくなったら、
ぼくは毎日幸せですね。
(「どうでもいい」が嫌だというのは、すごく
沼澤さんらしいなあと思いながら聞いていました。
今回は、ちょっと短めですが、
そんな中で、対談は明日につづきます。待っててね。
ちなみに、明日の最終回は、このシリーズの中で、
もっともおもしろいぐらいの内容だ、と思いますだ) |