第6回
一流は、まわりを信用していない |
糸井 |
ジャズバンドやってるときって、
リスナーだけじゃなく
演奏している自分も楽しませるようなことが
いっぱいあるジャンルだから、
絵として、すっごい大きい絵が
描けるんだよね。 |
沼澤 |
ブルーノートのときですか? |
糸井 |
うん!あれ、大きい絵が描けてたよね。 |
沼澤 |
いちばん大きな理由は、
ステージで演奏している
人たちの間に繋がりがあるでしょうね。
ああいう時って、あの中に一人でも
「あいつ大丈夫かな?」
っていうことがあったりすると、
あんなライブにはならないんですよ。 |
糸井 |
皆さん、すっごいテクニックを
お持ちの人たちでしょ? |
沼澤 |
みんな、クレジットもすごいですから。
プリンスとずーっとやってた
サックス・プレーヤーもいますし。
あのバンドは僕にとって
一番古いバンドですけど、
1年に1回会うぐらいで、
頻繁にライブはやらないんです。
もう、15、6年ぐらいの仲間ですね。
お互い、なかなか会えないんで、
演奏するときには、
「やっと一緒に演奏できたじゃん」
っていう気持ちが、あるんですよね。 |
糸井 |
あ、そうですか。 |
沼澤 |
やっぱり、音楽のジャンルが原因ではなくて
そのときのメンツに左右されるんです。
だから、同じメンバーだったら
違うジャンルの音楽をやったとしても
たぶん、同じような演奏ができるんですよね。 |
糸井 |
あ〜、最高ですね。
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沼澤 |
そういう、バイブレーションみたいなものは、
音楽のジャンルと別に
あるのかもしれないですね。 |
糸井 |
じゃあ、あのライブを見た人って
お得ですよね。 |
沼澤 |
そうですね。
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糸井 |
あれを観て、ぼくは
「沼澤さんはこういうのを
見せたかったのかっ!」
感じがなんかあったなぁ。
「僕、こういう、こういうものなんですよ」
っていう名刺代わりのような。 |
沼澤 |
僕が日本に来始めたときって、
ああいう感じだったんですよ。
そのイメージが強かったせいか、
例えば、僕が、山崎まさよしと
やっているのを見て、
「なんで、山崎まさよしなんかと
やるんですか?」
とか、いう人もいるわけなんですよ。 |
糸井 |
山崎まさよしでも?
はあはあはあ。 |
沼澤 |
ぼくも誰と一緒にやるべきかとか、
似たようなことを思った時期があったけど、
ちょっと待てよって。
お金を払って見に来るお客さんなんで、
それはありがたいと思っているけど、
あそこでやってる、ああいうぼくもいるけど、
山崎とやってるのも、同じ僕だよ、
って言いたいんです。 |
糸井 |
それは、大事なことですよね。 |
沼澤 |
いちいち聞いてたら、
キリが無いのかもしれないんですけど。
その事については
すごく考えることが多いです。 |
糸井 |
全部の意見を聞こうとすると
お客に潰されるんですよね。 |
沼澤 |
ぼくらが演奏するときには
自分がやってる音を返すモニターがあります。
そのモニターを頼りに
僕らは演奏しているんです。
ステージ側と外側っていうのは、
完全に音が別になっていて。
お客さん側には、
ぼくらがモニターから聞いているのとは
全く別の音が流れているんです。
つまり、演奏する側のぼくらが演奏しやすい音と
お客さんに聞かせたい音っていうのは
違うんです。
そういうことを一番意識しなきゃいけないのは
実は看板に当たる人なんですよ。
一番、お客さんに近い所で演奏しているから
一番、聞えてるんですよね。外の音に。
モニターで聞いている音と
外で聞こえる音の関連性に、
トラブルがあったり迷ったときに、
ものすっごい慌てたりする人もいるんですけど
それを信用してないのが
民生君とか矢沢永吉さん。 |
糸井 |
そうだ。 |
沼澤 |
もう、信用してない。
音が悪かろうが何しようが、
とにかく届けるものは届ける。
その事を民生君が
矢沢永吉さんを観て言ってた。
「ROCK JAPANESE」という
矢沢さんのトリビュートライブでの
話らしいんですけど
民生君が、そのときの話をしてくれて。
その時、「これだっ!」って
思ったらしいんですよ。
自分が思ってたことを、
この人はやってのけてる!って思った。 |
糸井 |
長年の経験でね。 |
沼澤 |
「ブワッ!」って歌いだした瞬間に、
自分が思ってたことを、
「ドバッ」てやってるって。
「すごいっ! もう敵わないっ!」
って思ったらしいんですよ。 |
糸井 |
ぼくも観てたんですけど、
それまでに出てたバンドをブッ飛ばしましたよ。 |
沼澤 |
それも民生君が言ってた。
あの人が歌い始めた瞬間に、
「この人はやっぱり信用してないんだ」
って思ったって。
「自分だけを頼りに、客に届けるんだ」
っていう。 |
糸井 |
それこそ、本当の看板ってやつだよね。 |
沼澤 |
よくあるのは、そこの音が悪いっていって、
文句言い出す人とかもいるんだけど
でも、そういうことを言ったりするのは
お客さんの前ではタブーなんです。 |
糸井 |
はぁーっ!あのコンサート、
「矢沢永吉」が、いちばん面白かったです。
今までいっぱい出てたバンドが、
一気にさらわれてくっていう。
一人でお客さんのフリして出て来て、
一気にお客さんをさらっていったんですよ。
ちょうど、彼もウエイトトレーニングしてる最中で、
デッかくてムキムキの状態なんですよ。
あれ見て、
「あ、身体、鍛えるべきだな」って思ったし、
「あれがないと、押せないな」とも思った。 |
沼澤 |
ふーん。 |
糸井 |
あのシーン見るために見るコンサートですね。 |
沼澤 |
矢沢さんがリハーサルをやるとき、
ステージに出て来た瞬間から、
すごかったって言ってた。
マイクを持って出た瞬間に、
鎖を解き放たれたように飛び出してきて、
それでもう、みんなブッ飛んだって。
でも、それってリハーサルなんですよ。 |
糸井 |
それは、想像できる(笑)。
そうなのよ。いい意味で
トゥーマッチなのよ(笑)。
たぶんその時、
デカい声で歌ってるハズですよね。
「矢沢永吉」は特別ですよ。 |
沼澤 |
宇宙人ですよね。 |
糸井 |
外人にもああいうタイプはいるんだろうけど、
やっぱ、特別ですねー。
(つづきます!) |