糸井 |
小野田さんがフィリピンから帰還されて、
27年が経つんですねぇ。 |
小野田 |
そうですね・・・。
もう、そんなに経ったんですか。 |
糸井 |
いま、小野田さんは
「自然塾」というものを開いてますよね?
子どもに、自然から
いろいろなことを学んでもらう塾。
・・・ぶしつけだとは思いますが、
小野田さんは、ご自分の子どもをつくろう、
と意識されたことは、なかったんですか? |
小野田 |
昔から「授かりもの」といいますし。
家内も、年齢がいっぱいいっぱいだから。
それに、なによりも、
牧場の開発が忙しくて・・・。
寝る時間が、毎日4時間ぐらいしか
ないんですよ。 |
糸井 |
え? 睡眠4時間なんですか。 |
小野田 |
ええ。
ですからね、よく人から
「牛の子どもをふやすことばかり考えて、
人間の子どものほうは、忘れたの?」
なんて、冗談を言われるんです(笑)。 |
糸井 |
(笑)ふふふ。
ただ、ぼくは、小野田さんの、
「自分の子どもを持たないまま
子どもに教える」というスタイルを、
とてもおもしろいと思っているんです。
・・・やはり、親には、
どうしてもエゴがありますもの。
他人と教育について話す時に言うことと、
自分の子どもを実際に育てる時の
育てかたが違う人って、
ほんとうにたくさんいますから。
建前とエゴの差、と言いますか。
ですから、小野田さんなら、
わけへだてない考えかたで
教育について考えていらっしゃるように
ぼくには思えるんです。 |
小野田 |
そうですね。
たとえば、「自然塾」のキャンプから
自宅へ戻っていく子どもたちには、
保護者に渡す手紙を持って帰らせるんです。
それは、こんな内容です。
「はりきってキャンプに参加していたから
体もくたびれているし、
精神的にも、
多少くたびれているかもしれませんが、
2〜3日の間、みやげ話は
そのまま聞いてほしい」と。
キャンプから家に戻った子どもは、
「キャンプ場でこんなことをやったよ」と
親にいろいろ報告しますよね?
だけど、キャンプでやってることは、
ふだんのしつけからは、
かけ離れたことかもしれないわけで・・・。
そんなとき、親が頭ごなしに
「え? そんなことをしたのか!
ダメじゃないか!」
と叱ってしまうと、子どもは、
せっかく話そうとしていたみやげ話を
もう一切しなくなってしまう。
そうなってしまえば、
おとなは、自分の子どもの本質、つまり、
「どういう資質を持っているか」
「何を楽しいと思うか」
「どういう性格なのか」
といったような大切なことを、
つかみ損なってしまうのではないか。
ぼくは、そう思うのです。
だから、保護者のみなさんには
「とにかくキャンプ場の泥を
下品に話すことも含めて、
そっくりそのまま、
自由に吐かせてやってください。
それがその子の本質を見たり、
こころの片鱗を見つけ出すための
ひとつのきっかけになるかもしれないから」
こう、お願いしているんです。 |
糸井 |
へえ。 |
小野田 |
ぼくは、キャンプ場では、
できるだけ子どもたちの
自主性を尊んでいます。
ですから、
他人に迷惑をかけちゃいけない、
ということを徹底する以外は、
少々のイタズラには、目をつむってまして。
だから、親のふだんのしつけからは
ちょっと離れてしまうことがあるんですね。 |
糸井 |
ははあ。
キャンプでは、
子どもさんたちは
やっぱり精根尽き果てるわけですか? |
小野田 |
そうですね(笑)。
子どもどうしですから、
寄り集まると、どうしても
お互いに競いあうんですよね。
親の目から離れているので、
本性、むきだしですよ。 |
糸井 |
おお。 |
小野田 |
ま、ぼく自身も、
できの悪い子どもでしたから。
外で遊んだことを得意になって話しても、
親に「・・・そんなこと!」と、
いつも叱られちゃっていましたね。 |
糸井 |
(笑)
子供のころの小野田さんは、
優等生ではなかったわけですか? |
小野田 |
ええ。 |
(続きます。)