CHILD
これでも教育の話?
どんな子供に育ってほしいかを、
ざっくばらんに。

「教育についてシリーズの対談をしませんか」という
依頼をいただいた。
なんにも考えていない、というわけじゃないけど、
ぼくなんかが教育についてなんて口幅ったいなぁと思って、
やめとこうとしたんだけど、ふと思いついたことがあった。
相手の方の人選しだいでは、なにかできそうだぞ。

ぼくの頭に浮かんだのは小野田寛郎さんの自然塾のことや、
神奈川大学の駅伝の監督・大後栄治さんのことだった。
綾戸智絵さんのことも横尾忠則さんのことも思い浮かぶ。
そういう人と教育のことを話したら、
きっと違う何かが見えてきそうだ。
「引き受けさせていただきます」と、答えることになった。

第11回 あの先生がいっていたこと

内田睦夫先生のプロフィールはこちら。


糸井 内田さんは、やっぱり教育がお好きなんですね。
コーチングというか・・・。
内田 人に指導をすることは、
監督をやっていたときにはじめて
おもしろいなと思ったんですよ。
今はこうしていろんなところで
お話する機会がありますが、
現役監督のときは、そのノウハウは
絶対他人にいわなかったです。
糸井 競争相手には(笑)。
内田 ええ(笑)。
自分なりにいろんなことを解析しながら、
それをいかにして選手にわからせていくか。
これはものすごく楽しかったですね。
成果が出るのがすごく待ち遠しい。
糸井 農業に近いですね、
苗を育てて・・・。
内田 そうですよ、
畑を耕すのと一緒。
わたし自身、入社式に聞いた訓話を生かせたのは
28年後ですから。
糸井 28年後!
内田 入社してすぐの研修会で
「日立式の活歩とは」という話がありました。
ふつうに歩く速度ではなく、
ある目的を持って歩くスピードは
「1分間 に100歩」だという話。
このときは、わりと
限定した意味で話されたんですけど。

自分が現場のリーダーになったとき、
工場の人数を削減したことがありました。
工場の設備はそのままですから、
当然空間がまばらになりますね。
みんな、歩いてばっかりなわけです。

そこで「活歩とは」という話を思い出した。
もしかして、歩くことによって
仕事の効率が落ちているんじゃないだろうか、
わたしはそう思いました。

10日間、全員に万歩計をつけさせてみたんです。
そしたら、1日の歩数平均がひとり8,500歩。
8,500歩を「活歩」の100で割ると85分。
8時間勤務のうちの
1時間25分は歩いている
ということになっちゃった。
糸井 それはまずい(笑)。
内田 そこからヒントを得て、工場のレイアウトを
12億円かけて圧縮しちゃったんですよ。
そしたら平均4,000歩ちょっとに下がった。
時間にして、40分。
たったひとりが40分下がったんじゃない。
これが例えば 400人だと、すごい時間ですよ。
糸井 しかも、毎日。
内田 モーターが1日10台も
余分にできるようになるんです。
糸井 28年前の訓話を、
そんなふうな形で生かしたんですね。
内田 ええ。学校の教育と全く同じ。
先生方にもこういってるんです。
「きょうのあしたを生きるんじゃなくて、
 今いったことが10年後、20年後、
 生徒たちが仕事でいろんな立場になったときや、
 将来の生活の中で、
 あの先生、こういうことをいったな、
 と思い出すことがあるかもしれない。
 そういうことが学校の仕事なんだよ」
と。そういうやりがいを先生方に持ってほしい。
ただ、子どもたちのほうのアンテナがね・・・。
糸井 やっぱり気づく力は必要ですよね。
何かを不自由と感じたり、
思い起こしてくれる感受性が。
内田 そうなんですよ。
そこへどう持っていくか、つなぐか。
その「生徒の力」をつけていきたいんです。
本気でね。
糸井 しかし、このファイルはおもしろいですね。
このファイルに
全部詰まっているというところが
内田さんらしいなあ。
これ、つくれったってできないですよ。
長年の蓄積全部ですよ。
内田 自分で考えたことをいろいろこうして残していて、
時々、こうやって見ているんですよ。
糸井 ああ、ご自分でもね。
内田 そう、考えを変えないように。
一部置いていきますよ。
さしあげます。
糸井 わあ、ぜひ下さい。
あ、ほんとにありがとうございます。
ちょっとまねします(笑)。
ありがとうございました。

(おわり)

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2002-05-21-TUE

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