糸井 |
内田さんは、やっぱり教育がお好きなんですね。
コーチングというか・・・。 |
内田 |
人に指導をすることは、
監督をやっていたときにはじめて
おもしろいなと思ったんですよ。
今はこうしていろんなところで
お話する機会がありますが、
現役監督のときは、そのノウハウは
絶対他人にいわなかったです。 |
糸井 |
競争相手には(笑)。 |
内田 |
ええ(笑)。
自分なりにいろんなことを解析しながら、
それをいかにして選手にわからせていくか。
これはものすごく楽しかったですね。
成果が出るのがすごく待ち遠しい。 |
糸井 |
農業に近いですね、
苗を育てて・・・。 |
内田 |
そうですよ、
畑を耕すのと一緒。
わたし自身、入社式に聞いた訓話を生かせたのは
28年後ですから。 |
糸井 |
28年後! |
内田 |
入社してすぐの研修会で
「日立式の活歩とは」という話がありました。
ふつうに歩く速度ではなく、
ある目的を持って歩くスピードは
「1分間 に100歩」だという話。
このときは、わりと
限定した意味で話されたんですけど。
自分が現場のリーダーになったとき、
工場の人数を削減したことがありました。
工場の設備はそのままですから、
当然空間がまばらになりますね。
みんな、歩いてばっかりなわけです。
そこで「活歩とは」という話を思い出した。
もしかして、歩くことによって
仕事の効率が落ちているんじゃないだろうか、
わたしはそう思いました。
10日間、全員に万歩計をつけさせてみたんです。
そしたら、1日の歩数平均がひとり8,500歩。
8,500歩を「活歩」の100で割ると85分。
8時間勤務のうちの
1時間25分は歩いている
ということになっちゃった。 |
糸井 |
それはまずい(笑)。 |
内田 |
そこからヒントを得て、工場のレイアウトを
12億円かけて圧縮しちゃったんですよ。
そしたら平均4,000歩ちょっとに下がった。
時間にして、40分。
たったひとりが40分下がったんじゃない。
これが例えば 400人だと、すごい時間ですよ。 |
糸井 |
しかも、毎日。 |
内田 |
モーターが1日10台も
余分にできるようになるんです。 |
糸井 |
28年前の訓話を、
そんなふうな形で生かしたんですね。 |
内田 |
ええ。学校の教育と全く同じ。
先生方にもこういってるんです。
「きょうのあしたを生きるんじゃなくて、
今いったことが10年後、20年後、
生徒たちが仕事でいろんな立場になったときや、
将来の生活の中で、
あの先生、こういうことをいったな、
と思い出すことがあるかもしれない。
そういうことが学校の仕事なんだよ」
と。そういうやりがいを先生方に持ってほしい。
ただ、子どもたちのほうのアンテナがね・・・。 |
糸井 |
やっぱり気づく力は必要ですよね。
何かを不自由と感じたり、
思い起こしてくれる感受性が。 |
内田 |
そうなんですよ。
そこへどう持っていくか、つなぐか。
その「生徒の力」をつけていきたいんです。
本気でね。 |
糸井 |
しかし、このファイルはおもしろいですね。
このファイルに
全部詰まっているというところが
内田さんらしいなあ。
これ、つくれったってできないですよ。
長年の蓄積全部ですよ。 |
内田 |
自分で考えたことをいろいろこうして残していて、
時々、こうやって見ているんですよ。 |
糸井 |
ああ、ご自分でもね。 |
内田 |
そう、考えを変えないように。
一部置いていきますよ。
さしあげます。 |
糸井 |
わあ、ぜひ下さい。
あ、ほんとにありがとうございます。
ちょっとまねします(笑)。
ありがとうございました。 |