糸井 |
今回しゃべっていただく時間は、
約八〇分を予定しているのですが、
きっと、論証として成り立たなくても、
「うわぁ、びっくりしたなぁ!」
という時間になったほうが、うれしいんです。
たぶん、八〇分で、論を立てて、それを
丁寧に語ることは、むずかしいと思うんです。
だけど、この講演のタイトルは、
なにしろ、「学問は、驚きだ」ですから。
岩井さんがお書きになった
『会社はこれからどうなるのか』
にしても、読んでいて、驚きがあったのが、
何より、大きかったことなんです。
授業と重なるところがあってもいいですし、
話が飛んじゃってもいいです。
聞いた人が、つい、
「自分の身近な人には、ぜひこれを伝えたい」
と思うようなお話になっていれば、
何より、ですよね。
今現在の、岩井さんが
いちばん力を入れている研究テーマって、
どういうあたりなのですか? |
岩井 |
去年の秋に学部長を辞めて
ラクになるかと思ったら、
これが、ぜんぜん、ラクにならなくて。
責任は少し減りましたが、
それぞれの大学の世界的な研究をするチームに
多額の資金を出すという制度ができまして。
私の学部はふたつとったんです。
そのうちのひとつの申請書は、
主に私が原稿を書いたものですから、
その後の実施の実質的な責任者を
引き受けざるを得なくなり、
予算の配分などを切り盛りしなくてはならない。
ほんとに今は予算年度末で、
ウソみたいに忙しい。
まったく会計の役に徹しています。 |
糸井 |
(笑) |
岩井 |
たしかに、学部長にされる前は
あまりにも、自分のペースでやってきました。
教授会にもロクに出ていませんでした。
それなのに、ちゃんと研究室をもらって
本を沢山置いていたりしましたから、
学部長に選ばれてしまったとき、
「大学を利用するだけではなくて、
少しは、公共精神を持たなければ」
と、殊勝な気持になったのが運の尽きでした。
学部長になってみたら、忙しいの何の。
そして任期が終わっても、
一度なっちゃうと、次から次へと、
あとしまつが必要になってくるんです。 |
糸井 |
(笑) |
岩井 |
経済学で言う、
不良在庫がたまってくるんです。
もう、不良在庫処理に追われてしまって……。 |
糸井 |
事業の在庫や、研究の在庫も、
不良化していくという話は、
それを本で読みたいぐらい、おもしろいです。
あれもこれもやらなきゃ、と思って
仕事をしているときとかって、
できないまま不良在庫化していくものが、
山ほど、ありますよね。
ほんとはその在庫って、捨てるべきですもん。 |
岩井 |
これだけ不良在庫を抱えちゃったので、
もう、たいへんで、ひとつ決心をしたんです。
もともと、忙しくやることが
好きではなかったんです。
今は、すべての原稿連載を断って、
クリーンにしてみました。
今の会計が終わったら、
研究活動に戻るために、準備をしているんです。
そうは言っても、
インタビューや講演原稿の直しが入るので、
まだ百%の自由には、なりませんけど、
しめきりというものをなくす人生を、
これからの数年は、送りたいと思っています。
そのための実行を、はじめたところです。 |
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(明日に、つづきます!) |