
さとみ |
うちで繰り返し、よく言われたのが、
「さとみの心の中には、
まだかたちがガタガタの石があって、
転がすと音がする。
でも、それをどんどんどんどん転がしていって、
真ん丸にしなさい。
そうして転がしても
音のしない石をつくりなさい」
みたいな、わかるような、
わからんような話をされて。
要は、自分の中身を磨いて、
ちゃんとした人になりなさい、
っていう意味なんでしょうけど。
なんかそんな話をずっとされてた憶えがあります。
何かあるたびに、そういう手紙をくれてましたね。 |
ほぼ日 |
手紙? |

さとみ |
うん。
たとえば、小学校に入学とか中学卒業とか、
そういう何かの節目には必ず手紙があった。
誕生日とかはもちろん。 |

るか |
一緒に住んでるときも?
部屋の前に置いてあったりするの? |

さとみ |
いや、これ、ハイ、って手渡しで。
「さとみさんへ」とか
達筆な字で書いてあって(笑)。
普段は呼び捨てなのに。
あんまり内容は憶えてないんですけど、
「これから頑張って」とか。
「パパは今これが仕事で、ママはこれが仕事で、
さとみは勉強することが仕事ですね」とか、
そういう教えが書かれてたり(笑)。 |

英 |
あんだちゃんは、
お父さんに手紙とかもらったことありますか? |

あんだ |
あ、なんか、
小さいころは手作り絵本みたいなので、
「トイレのしかたの本」とか、そういうのを。 |
みんな |
わあー。いいなあ。 |

あんだ |
手紙と言えば、ひとつだけ、
すっごい思い出深いことがあって‥‥。
わたしが高校生のとき、
学校の帰りにカラオケに行ったんですよ。
そしたら、それが先生にバレちゃって。
寄り道はいけないって言われてるのに、
カラオケなんて軟派なところに行って
先生にすっごい怒られた。
部活のみんなで行ったんですけど、
「部活、もう活動禁止!」みたいになって。
「なんでですか!?」
「先生のバカヤロー!」みたいな感じになっちゃって。
で、すっごい参ってたんです。
「親も呼び出しね!」とか言われてて。
あー、もーやだー、とか思って、
辛くなってたときに、父が、
「いや、俺も行くから。先生のとこ行くよ」って。
で、手紙をくれたんです。 |
ほぼ日 |
ほうほう。何て書いてあったの? |

あんだ |
‥‥なんか、
「そういう辛いことがあるけど、
それを、いま乗り越えれば、少しずつ大人になって、
いい人になれるよ。
楽しいばっかりのドラマは、
観ててもつまらないだろう?」
みたいな、そういうかんじでした。
ほんと、でも、そうだなあって。
|
みんな |
へええ。 |

さとみ |
泣いた? |

あんだ |
うん‥‥チキショーって‥‥。 |

賢作 |
アハハ‥‥いいね。青春してるな。 |
ほぼ日 |
感動するなー。チクショー。 |

あんだ |
1本取られた。 |

賢作 |
そういうときってさ、
いちばん最後に「お父さんより」とか
書いてあるの?
「重里」とか書いてあるの? |

あんだ |
フルネームで。 |

賢作 |
「糸井重里」。あー、そうなんだなー。 |

あんだ |
「父より 糸井重里」とか、そういう感じかな。 |
みんな |
へー。
|

英 |
賢作さんご自身も、家族に手紙を書くときは
やっぱりフルネームですか。 |

賢作 |
あのね、旅が多いんですよ、僕。
で、たまには葉書でも出すか、って思うんだけど、
これがさ、また、誰に出すかが問題で。
家族3人連名にしちゃってもいいんだけど、
そうするとよけいに書けなくなっちゃってね。
自分のことだけ書いて出せばいいのかも知れないけど、
なんかね、それぞれに出して、何か言いたいんだよね。 |

さとみ |
へえ、それぞれに!
奥様、息子さん、娘さんって。 |

賢作 |
そうそう。 |

るか |
どう違うんですか? |

賢作 |
やっぱ、男の子には
「サッカー頑張ってますか?」みたいにね。
で、なんだか男の子には「お父さんより」とか
書けるんだけど、
娘に「お父さんより」って、
あれっ? っていう感覚なんだよね。
でも、「谷川賢作」って、
フルネームも変だな、って。
英さんは、手紙とかもらったことありますか?
|

英 |
ありますね。
僕は高校中退して、
1年ぐらい禅寺に修業に出されたり、
インドへ連れて行かれたりして。
その後、アメリカに留学したから、
手紙はちょくちょく書いてくれた。
でも僕、何にも憶えてないんですよ、内容。
|

さとみ |
絵とかは、描いてあったんですか? |

英 |
絵は、描いてくれなかったかな?
父の絵入りの手紙の話ではないんだけど、
僕、留学していたときに、
画家の谷内六郎さんの娘さんと一緒になって。
で、六郎さんから4コママンガ入りの
お手紙を頂いたのが、
僕はすごい印象に残っているかな(笑)。
うちの父からは、けっこうやっぱり説教だったかなぁ。
きっと今から思うと、愛情のこもった?
もしかすると絵入りだったかもしれないけど。
|

さとみ |
でも、ご心配なさってたんですね。 |

英 |
きっと心配のしかたが、母親とはぜんぜん違って。
母親のほうは、
行動を伴った心配のしかただから、
そっちのほうは憶えてるんです。
たとえば、電話かけてきたりとか、
極端な話、アメリカに来ちゃったりとか。
父はそういうこと、しないから。 |
ほぼ日 |
陰から見守っているタイプだったんですね。 |

英 |
だから手紙が多かったんでしょうね。
もう残念なことに、内容は憶えてないっていう(笑)。
あ、でも、父がアメリカに来たことはあったなあ。
そのときは、「心配で来た」ということをあらわすよりも、
展覧会へ一緒に行ったり、いろいろな人に
会わせてくれましたね。
|

あんだ |
お父さんからの手紙は、何通ぐらい来ました?
|

英 |
向こうにいる間、けっこう来ましたね。
んー、父もけっこう手紙を書くのが好きなんで。
それで僕も返事を書いて。
なんか、「息子からのポストカード」とかいって、
僕が送ったポストカードを、
絵の題材にしてくれたり。
|
みんな |
へー! 素敵‥‥! |

英 |
そんな(笑)。
父は息子自慢のような気持ちではないんですよ。
それがどうしたの? ぐらいにしか
僕は思っていなかったんだけどね。
きっとあれなんでしょうね、
父親はあんまり感情を出して、
僕に接してたっていうことはあんまりなかったかな?
どっちかっていうと、
環境づくりをしてくれたかな。
|

さとみ |
いっつも必ず言われることって、ありました? |

英 |
具体的には憶えてないんですけど、
ま、躾けに関しては、ほんっとに細かすぎるぐらい、
きびしかったかな。
っていうわりには僕、
ぜんぜん躾けのよい大人にはなっていないんだけどね。
たとえば父と打ち合わせに行ってても
一言なんか言ったことで、言い方が違うとか。
それこそ箸ひとつ落としたときの
取り方じゃないけど、そういうことを細かく。
母親よりも言われた。
考えてみると、もう僕が40代で父が60代なのに、
いまだに小さい子どもと親の
ケンカみたいに
親のひと言ひと言に
ムカツいたり反抗したりする親子関係を
友達からは「羨ましいじゃん」って
言われちゃったこともあるけど。
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さとみ |
なんか、いいですね。 |

英 |
うん、小学生レベルの会話が
まだできてるっていうのは、
極端な話、ま、いいかな?って。
もう大切に大切に、「あ、大丈夫?」なんて
こっちが必要以上に
いたわらなければいけない父でなくて
あー良かったなーなんてね。
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ほぼ日 |
すごい関わってる親子ですよね。
あきらめてないですよね、親を(笑)。 |

英 |
人から見ると、すごい仲良しじゃん、
って言われるんですけど、
たぶんそうなんでしょうね。
いろいろお話しましたけど、
結果的には仲がいいのかな。
ひとつひとつを具体的に言うと照れ臭いけども、
あぁ好きだな、って、
最近言えるようになってきたかな。
こういう場に参加させていただけて、
ちょうど良かったのかも知れない。
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みんな |
わああ(感動) |
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<あさってに、つづきます!>
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