
賢作 |
小学校3、4年とかに
譜面を誕生日プレゼントにもらったなあ。
ベートーベンが好きで、
ヘッドフォンで朝起きて聴いてたのね、
「田園(ベートーベン交響曲第6番)」とか。
そしたらおやじが起きてきて、
「なに聴いてんの?」「田園」「ふーん」
とか言ってたんだけど、誕生日になったら、
その「田園」のスコアをくれた。
ほんとに自分の好きなことを早く見つけて、
そっちのほうに気持ち良く行ってほしいっていう。 |
ほぼ日 |
谷川俊太郎さんの「さようなら」(註)の詩、
そのまんまですよね。
自分の好きなことを見つけて生きなさい、って。
註 |
「さようなら」
1988年に出版された詩集『はだか』(筑摩書房)に収められている詩。同詩に、賢作さんが曲をつけた歌がCD『そらをとぶ』(DiVa/コロムビア)で聴くことができますよ。 |
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賢作 |
あー、そうそう。
そういうことですね。 |
みんな |
へええ。 |
ほぼ日 |
「さようなら」の詩が、じつは息子宛だったり、
「MOTHER」も、じつはあんだちゃんを思って
作ったっていう話があったり。
そういうふうに、自分は全然知らないところで
じつは親からすごい意識されてたとか、
思われてたってことが、あるんですよねえ。
英さんはいかがでしたか? |

英 |
いろんな人のところに連れて行かれたりとか、
いろいろなものを見に行ったりとか、
そういった積み重ねが、それにあたるのかなぁ。
小学校の頃から家族写真を1年に1回撮っていて、
その写真を写真集で出しちゃうとか(笑)。
それは、もしかしたら本人の自己満足といえば
そうかも知れないけど、
僕からしてみれば、
家族の写真集を出すことが
家族への愛情表現なのかな、と思ってましたね。
有名人一家の写真でもないのに、
本に出しちゃって、みんなに家族を紹介してくれてる、
そういった父の仕事で、
なんとなく感じてたかな。
直接自分に対して何かしてくれた
ってことじゃなくて。
父が作っているもの、活動するものを見て、
母を含め家族がそれぞれ、感じてることが、
なんか家族愛じゃないけど、
父からのメッセージに
なってんじゃないかな、
っていうのを、最近なんとなく思います。
今でも仕事を通して、父の良さだったりとか、
あ、理解してくれてんだな、ってことがわかる。
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さとみ |
オレの背中を見て育てっていうことを
意識されてるわけじゃないんだろうけど、
息子にそう思わせるってすごいし、
そうくみとれる英さんも素敵ですね。 |

英 |
いえいえ(笑)。
そういうのが、
最近一緒に仕事をするようになって
わかるようになってきましたね。
さっきの子どものときだと、
接点がないまま、
離れたところからの話だったので、
具体性がなかったんですが。
いつもいないし、どっちかっていうと、
喋りかけてくれないほうがいい、
っていうのが子どものころはあったけど、
自分が大人になってからは、
エピソードが自然に出てきますね。
40過ぎてだけども(笑)。
最近ほんとになーんか
父親、好きだなって思う。
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るか |
基本的にはね、お父さんはわたしに、
自分とおんなじようなことをして欲しいと
思ってた気がする。
だからちょっと私自身、
男らしくなったところがあるのかな?
車の運転とかもそうだったし。 |

さとみ |
わたしも、ある程度までは、
お父さんがこうしたら喜ぶだろうな
っていうことになんとなく合わせて
大っきくなってきた気がするんですけど、
けっきょく自分の進んでいる道を考えると、
自分がこうしたいと思って決めた道と、
親がこうして欲しいと思ってた道が
同じな感じがする。 |

るか |
わたしの場合、同じじゃないんだけど、
なんかたくましく生きるっていうことに関しては、
親の思いどおりになったのかな?(笑)
たとえば、うちのお父さん、
チェーンソーとか、
なんでもそういうの、やらせたがるんですよ。
だからそれが、毎日の暮らしに、
私自身は役に立っているわけじゃないんだけども、
あ、そういうこともできたら、
いつか役に立つかも知れないなって
思ってやってる(笑)。
だけど、そういうたくましさを育てる反面、
自分が思ってるいい女像みたいなのがあって、
そうなって欲しいっていうのも、
どっかですごい感じるんですよ。
だから「いいんだぞ、細いままで」とか
言われます。
こういうの着たらいいんじゃないか?とか。 |

さとみ |
服のブランドは言うね、確かに。
「あの道の角に店があるけど、
ああいう服を着るような女性がいいよ」とか。
見に行ったら、マックス・マーラだったりして、
高くて買えない、みたいな。 |

賢作 |
あ、買ってくれるわけじゃないんだ。 |

さとみ |
買ってくれるわけじゃない。
ああいうのがいいぞ、って教えるだけ(笑)。 |

あんだ |
服は、親がいいと思って
選んでくれたものとかがあって。
小学生のときに、コム・デ・ギャルソンの、
コートを買ってくれたんですよ。 |
ほぼ日 |
コ、コム・デ・ギャルソン‥‥! |

あんだ |
子供用じゃないし、すっごい重いし、
学校に着てってみたんですけど、分厚すぎて
ランドセルがしょえなくて。
穴をいちばん大きいとこにして。
肩の縫い目とかがすっごい下にきちゃって。
で、「フーン」って、
ちょっと嬉しい感じで行ったら、
「何それっ!?」ってみんなに言われて。
「学校の規定のコートじゃないと、ダメなんだよ」
とか言われて。
「パパが買ってくれたのに」って言ったら、
「えー、でもさー、着ないほうがいいよ、
先生に怒られちゃうよ」
とかって言われて。
泣く泣く1回でやめました。
で、普段も着れなくて。
2、3年前ぐらいから
やっと着れるようになった。
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さとみ |
え、何年越し? |

あんだ |
8年越しぐらいかな?
試着とかもせずに、普通になんか、
「あ、これ」って買ってくれた。 |

るか |
「これ、あんだに買おう!」みたいな、
そういう感じ(笑)。 |

あんだ |
で、やっと着れるようになって、
「あ!これ、あれだろう?」って。
「あの、小学生のとき買ったやつ」みたいな。 |

るか |
ちゃんと憶えてるんだね。
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英 |
ねえ。 |

あんだ |
でも、今でも、やっぱりちょっと大っきいかな?
だけど、気に入ってます。 |

さとみ |
あんだちゃんは、
お父さんのセンスがいいからいいよね。
うちのお父さんとか、なんか突然、
ウエスタン・ブーツみたいなのを履いたりする
独自のファッションの人で(笑)。
で、わたしにもなんかそういう、
どうも独自な服を買ってきて。
でも、あんまり好きじゃないから、
「えー、着たくなーい」ってイヤな顔を
ついしちゃうと、すごい怒りだすんです。
「もうそんなにイヤだったら、
親戚の○○ちゃんにあげる」っていって、
ポイッて、部屋の隅に投げたりして。
スネるんですよねー。 |

るか |
意外とうるさいよね!
だってね、わたし1回、合宿所までね、
お父さんがチェックしに来たことがあって。 |

英 |
えええーっ! |

るか |
うち、小学校からずっと制服だったんですよ。
で、中学も高校もぜんぶ制服だったから、
私服で外を歩くってことがあんまりなくて、
服をあんまり持ってなかったのね。
で、中学校2年生ぐらいの合宿のとき、
みんな私服で行かなくちゃいけなくて、
合宿所が山梨の別荘の近くにあったんですけど、
みんなで夜キャンプファイヤーをやってるところを、
静かに覗きに来たらしくて、
「みんながこういう可愛いのを着てたのに、
なんでお前だけジャージを着てたんだ?」って。
帰ってきてから言うの。
その場で声かけないで。
ひどくない? |

さとみ |
わざわざ行ったんだから、
そこは声かけてほしいね! |

るか |
なんじゃ、そりゃあ!? って。
行く前にリュックとかそういう小物系は、
お父さんが好きなアウトドアのブランドで
ぜんぶ買い揃えてくれたんだけど、
洋服まではさすがにわかんなくて
買ってくれなかったのね。
だけど、やっぱりトータル・コーディネートしてて
欲しかったみたい(笑)。
「お前だけ、なんでジャージで。変だった」
ってずっと言ってた。 |

賢作 |
なんか気持ちわかる。「チッ」て感じ。
いちばん可愛いのがうちの娘だ、っていう。 |

るか |
あー、そういうことかぁ! |

賢作 |
そうだよ、それは。
残念っ!て感じなんだよ、それは。
なんだよ、みたいな。 |

さとみ |
キラキラしててほしいんだよね。 |

賢作 |
いいなっ、父親の心(笑)。 |

あんだ |
でも、男の人はファッションについて、
お父さんからアドバイス受けたりするんですか? |

賢作 |
アドバイス? |

あんだ |
一緒に買い物行ったりとかは、
なさそうですよね。 |

賢作 |
ないなー、服はなー。
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るか |
小汚い、って怒られたりしなかったですか? |

英 |
だいたいぼくは、父のヒッピーファッションが
小汚いと思っていたから(笑)。
お願い! って。
もう破けてるのはイヤだ、とか言って。
もう最近はね、ぜんぜん言わなくなったけど。
男だと、やっぱり母親と妹に
言いたくなるっていうのありますね。
やっぱり母には綺麗にしてもらいたいとか。
自分の好みの服を着てもらいたいなとか。
妹にもそう思いますね。
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賢作 |
いや、横尾さんほどじゃないけど、
ウチのおやじも
なんか変わった格好してんのが好きで。
みんなに言ってたけど、
「俺は最初に
ジーンズを履いた詩人なんだよ」
って。
「詩人」かよっ!みたいな。(笑)。
確かに、詩人の中だったら
初めてかもしれないけど、って。 |

さとみ |
ちょっと狭い(笑)。
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<月曜日に、つづきます!>
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