怪・その13
「残業」
以前務めていた会社での話です。
その会社にはおばけが出るという噂はありましたが、
僕はあまり気にしていませんでした。
仕事が忙しい時期は
夜遅くまで残業することもありましたが、
さすがに一人だけの会社に深夜0時過ぎまでいると
あまり気持ちがいいものではありません。
夏のある日、深夜0時。
会社で一人残業をしていると静かな社内で
自分の携帯電話が鳴り出しました。
僕は実家から会社に通っており、
電話は母からでした。
「今日は残業で遅くなるの?」
「仕事はもうすぐ終わるけど2時前には帰ると思う」
‥‥電話ではこんなやりとりがあったと思います。
話を切ってから仕事を終え、
会社を出る頃は1時30分を過ぎていました。
「2時前には家に着くな」
僕は、母が寝ているであろう家に帰りました。
予想通り2時前に家に着いたのですが
遅い時間にもかかわらず母は起きていました。
しかも怒っている様子。
「‥‥ほんとは今日、
仕事じゃなくて遊んでいたんじゃないの?」
突然そんなことを言い出す母。
残業でへとへとになって帰り着いた僕は、
この心ない母の言葉にかなりムッとしました。
そんな僕の反応を見て母は、
遊んでいなかったんだと理解した様子。
それでも
母の怒り方が少し気になったので
「なんで、僕が遊んでいると思ったの?」
と母に聞いてみると
母はサラリとこう答えました。
「だって電話で話している時に、
電話の向こうでずっと
女の人の笑い声が聞こえていたから‥‥」
…さすがにぞっとしました。
(マサフミ)
2006-08-14-MON