おさるアイコン ほぼ日の怪談2006

怪・その15
「踏切の向かい」

私が学生時代に住んでいた町は、
霊障害の多いことで有名でした。
当時私は踏切のすぐ脇のマンションに住んでいました。
学校から近いこともあり、
いつも溜まり場となっていたのですが、
その日はたまたま私一人。
冬の寒い夜の出来事でした。

その日、深夜にめずらしく目が覚めました。
私はめったなことでは目を覚まさず、
朝までグッスリというタイプです。
壁の時計を見ると2時。
窓の外で深夜の工事車両が
静かに通り過ぎる音を聞きました。
「水でも飲みに行こうかな?」と思ったその時、
身体の一部に、何か違和感を覚えました。

両足をそろえた足首の上に、何かが乗っています。
少し寝ぼけていた私は「ああ、実家の犬だ…」と思い、
はっと我に返りました。
そう、ここは東京です。
実家の犬がいるわけはありません。

寒い日でしたので、毛布と掛け布団をかけていて、
足元は見えません。
しかし、ハッキリと視線を感じるのです。
そこにいる何かが、私を見つめています。
ただ見つめているだけではないのです。
その視線から、言葉に言い表せない
憎悪の念が伝わってくるのです。
それは動く気配はありません。
ただ、足首をちょっでも動かすと、
それに合わせて傾くのがわかるのです。

私は思い切って、身体を少しだけ起こして、
そうっと足元を見たのです。
少しずつ、少しずつ見えてきたもの。
そこには。
男の人の頭がありました。

私の足に乗っていたのは、生首だったんです。

額の辺りまで見えた時、これ以上はダメだ!!
目線を合わせてはダメだ!! と思いました。
そのまま頭を下げ、手を組んで神様に
「助けてください」とひたすら祈りました。
全身、ビッシリ冷や汗をかいていました。
「もしかしたら、このまま殺されるかもしれない」と
大袈裟でなく思いました。
今までにも何度か幽霊を目撃したこともありましたが、
こんなにも恐ろしい念のようなものは、
感じたことがなかったのです。

ひたすら、ひたすら祈りながら、
私はいつしか眠りに落ちていました。

翌日、いつもの時間に目覚めた時、
既にそれはいなくなっていました。
「夢だったのかな?」と思いつつ、
シャワーを浴びにいき、ふと目線を下げると。

私の両足首の上には、
まるで絵の具で塗ったかのような、
はっきりとした青アザが残っていたのです。

その数日後、近所のアルバイト先で
知ることとなるのですが、
私が住んでいるマンションの目の前の踏切は、
自殺の名所として有名なところだったのです。
しかも昔、踏切を挟んだ向かいのマンションから
男性が飛び込み、上り電車にはねられ、
そのまま下り電車に轢かれるという
無残な事件があったとのことです。
遺体は無残な状態で、首が切断されていたと‥‥。

その人が、何かを訴えたくて
私のもとを訪れたのでしょうか?

(あんさま)


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2006-08-14-MON