怪・その33
「他のと一緒に」
大学3年生のお盆に、
父の実家に行ったときのことです。
父の実家では、毎年お盆になると「盆棚」といって、
お仏壇とは別に特別の棚を設けてお迎えをします。
白木で囲った台の前部にはお供え物、
後部には先祖代々の位牌が並び、
まわりもほおずきなどで飾られます。
いつものように、お線香を上げ、おりんを鳴らし、
目を閉じて手を合わせました。
すると、ふっと脳裏に、
「着物に赤い帯を締めた、小さな女の子」
の映像が浮かんだのです。
「?」と思って目をあけました。
と、今度は盆棚の下部にある、
飾り彫りの中がやけに気になりだします。
そっとその暗がりの中に手を入れてみると、
何か硬いものに触れました。
引き出してみると、それは古びた小さな位牌‥‥。
表には、○○童女、と記されています。
側にいた叔母がそれを見て、
他のと一緒にしてあげなさい、と言ったので、
私はその位牌を他の位牌の中に安置して、
もう一度手を合わせました。
(taru)
2006-08-28-MON