怪・その22
「ぽんぽんぽん‥‥」
その日は夜に帰ってきたばかりで疲れており
すぐに寝てしまいました。
夜中に
ふと何かの気配で目が覚めました。
布団を軽く
「ぽんぽんぽん‥‥」と押してきます。
母だな、と思いました。
小さい頃、布団からはみ出ないように
「ぽんぽん」と
手で押してくれていたからです。
夜中に起きたついでに
部屋の様子を見に来たのかな。
ちょっと懐かしくなりました。
「ありがと。もういいよ」
そう言って眠りにつこうとしました。
しかし「ぽんぽん」は止まることなく
だんだん私の身体に沿って叩いています。
「お母さん、ちょっとしつこいなぁ」
そんなことを思っていたのですが
だんだん変だと気づきました。
「これは、お母さんじゃない‥‥」
そのうち金縛りにあい
首に苦しさを感じました。
見ると、髪の長い女性が首を絞めているのです。
「これはまずい!」と思い、
必死で抵抗しました。
女性がいなくなったと思ったら
今度は強い力で左に引っ張られました。
凄い力で吸い込まれそうでしたが
必死に抵抗し、
部屋の電気コードを引っ張りました。
部屋に明かりが点ると
一気に楽になりました。
その後、部屋の電気を点けっ放しにしたのは
言うまでもありません。
朝、母に部屋に来たかを尋ねると
昨夜はぐっすりと寝ていたから
下には降りていないと言われました。
それ以後は特に変わったこともないので
あいかわらず仏壇の部屋で寝ていますが
あの「ぽんぽんぽん‥‥」という感触は
忘れることができません。
(N)
2007-08-26-SUN