おさるアイコン ほぼ日の怪談2007

怪・その25
「ハロウィン」


10年前、アメリカの田舎町にやってきて、
初めてのハロウィンの夜のことです。

その日私は出張で家にはおらず、
妻が一人で留守番をしていました。
彼女は本場の初ハロウィンを祝おうと
バスケットいっぱいのお菓子を用意して
夜、「Trick or treat !」と言って
たずねてくる子供達を待っていました。

ところが、うっかり、
例のろうそくの入ったカボチャを
家の前に用意していませんでした。
どうも、私達が住んでいたエリアは、
そのキャンドルカボチャが
「お菓子あるよ」のサインになっていたようで、
結局その夜、
子供達は一人も訪ねて来ませんでした。

その夜、床に入った妻は、
しばらくたってうなされ、目を開けました。
すると、胸の上にいきなり
アメリカ人らしい老婆の首が
のっかっていたのです。
その首はホログラフィーのように見え、
1930年代ぐらいの
品の良い髪型であったそうです。

「むかしここに住んでいた
 ハスラーさんはどこにいったの?」
老婆はゆっくりと妻に問いかけました。
そして、彼女もまたなぜか
「ハスラーさんはとっくに死んじゃったよ!」
ととっさに答えてしまったそうです。

すると次の瞬間、老婆の表情は怒りに満ち、
首が回転しはじめ、
彼女は金縛り状態になりました。
老婆の顔は徐々にフランケンシュタインのような
醜い顔にゆがんできて、
大きな口を開けながら妻の顔を飲み込もうと、
顔の前に近づいてきました。
あせった妻はありったけの力で
体をねじってそれをはらいのけました。

そして老婆は消えたそうです。
妻が言うには、
相手はアメリカ人のようなのですが、
なぜか言葉はダイレクトに脳にひびいて、
理解できたらしいのです。

ちなみにハロウィンは日本のお盆のように
霊がこの世に戻ってくると言われる日。
Treatしそこなった妻が
Trickされそうになったのかどうかはわかりません。
後日、大家さんにこの話しをしたら、
真剣な表情になって、
昔ここが火事になって、
亡くなった人がいるらしい、
と教えてくれました。

(カズリーヌのハズバン)


 
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2007-08-29-WED