怪・その26
「疣」
義母はよくおかしなことを体験するそうです。
ここは危ない所だから
みんなで手を繋いで動こう、と
知り合い数人で山で山菜取りしていたら
その間中ずっと誰かの手を
握っていたのだそうですが
義母だけが狐に化かされて
いくつも向うの山で気がついたとか。
そして、身体に小さい疣(いぼ)ができると
とても嫌がります。
嬉しいものではないので
嫌がるのは当然だろうけれど
何でそんなにも嫌がるのだろうと思って
話を聞いてみると
これが取れた時に
必ず誰かが亡くなるから嫌なのだ、
というのです。
数年前にも主人の叔父が入院した折も、
良くなる兆候があったので、皆で
「大丈夫だよ、すぐ退院だよ。」
と言っていたのですが、
義母だけがとてもがっくりしており、
様子が普通ではないように思われたので
他の親戚がいない所で
こっそりと話を聞いてみると
「首の所にできていた疣が取れてしまったから
Kさん(叔父の名前)はもたないよ。
だけどこれは誰にも言わないでね」
ということでした。
叔父の容態もそう悪くはないようでしたし、
私もまさかと思いましたが、
やはり誰にも言わない方がよかろうと
黙っておりました。
そのつぎの週に叔父は急変してしまい、
あっという間に亡くなってしまいました。
この疣は実は家の主人にもたまにでき、
やはり同じようなことが起きるのだそうで
それが取れそうになると実家の義母に電話して
病人がいないかどうか確認をしています。
私自身は鈍感な性質なようで
あまりそういう
霊を見たなどというような体験はないのですが
日頃こういうことを信じていない主人や義母が
真剣に嫌がるのを見るにつけ
なんだか判らない怖さを感じております。
(海栗・主婦)
2007-08-29-WED