怪・その43
押し入れの中
これは私が小学生の頃
約20年程前の不思議体験です。
その日、昼過ぎに座敷で寝そべり
押入れを足でドンドンと叩きながら
その部屋のテレビを見ていました。
すると女の人の声で
「はい」と声が聞こえました。
はじめは居間にいる母が
誰かと話をしているのかな?
と思いましたが
その声は私の足元から聞こえていました。
「まさかね」と思いつつ
今度は手でノックするように
トントンと数回、押入れの扉を叩きました。
しかし、返事はありません。
空耳かと思い、安堵の気持ちと
そのことで焦っていた自分が恥ずかしくなり
ふざけてドンドンドンドンと
両手で扉を叩きました。
すると、また
「はい」と返事が返ってきました。
確実に、押入れの中からです。
私は感じている恐怖より
この摩訶不思議な現象の謎を
確かめたいと思い、テレビを消し、
唯一家にいた母に、
何も喋ってないことを確認し、
再度、ノックをしました。
トントン‥‥。トントン‥‥。
数回ノックを繰り返した時
「はい」
返事が返ってきました。
心臓が破裂するのではと思うほど
バクバクいっていたのを覚えています。
しかし私はここまでしたのだからと
呼吸を整え、
恐る恐る押入れの扉を開きました。
しかし特に変わった様子はなく
いつも通り色んな箱が詰まれていました。
「ふ〜なんだ〜」と
私は少し緊張が緩み
押入れの中をかるく見渡しました。
その時、雛人形が入れてある箱が
目に止まりました。
私は何故か、雛人形が返事をしたのだと
“理解”しました。
その瞬間、背中に悪寒が走り
ヤバイと思った私はすぐに押入れを閉め
その部屋から立ち去りました。
その後、雛人形が飾ってある時期には
その部屋には入ることが出来ませんでした。
本当に雛人形が返事していたのでしょうか。
(メリ)
2008-09-03-WED