怪・その44
飛んでくる火の玉
これは、今は亡き母が、
中学生の頃体験したお話です。
ある冬の寒い日、7時頃に部活を終え、
辺りが真っ暗になった田んぼの畦道を
自転車に乗った母が
家路を急いでいた時の事です。
もうすぐ家に着くという時、
何やら、背後に気配を感じ、
ふと
自転車を止め後ろを振り返ってみると、
遠くの方にテニスボールくらいの
オレンジ色に燃える物体がありました。
その燃える物体を見ていると、
どんどん大きくなってきているように
見えるのですが、
よく見ていると、
大きくなっているのではなく
どんどん近づいていたのです。
怖くなった母は、
必死で自転車を走らせました。
すると、その丸く燃える物体は
どんどん母に近づいてきて、
最初テニスボールくらいだったのに、
バスケットボールくらいの大きさに
なっていたそうです。
そして、もの凄い勢いで、
母を追い抜きました。
燃える物体は火の玉でした。
追い抜かれる時、
その火の玉の中に顔があり、
母の方を見てニヤッと
笑ったように見えたそうです。
母を追い抜いた火の玉は、
近所の家に入って行ったんだそうです。
家に着いた母は、
早速母の母(私にとっては祖母)に
この事を話しました。
その話を聞いた祖母は、
何を思ったのか
火の玉が入った家を訪ねました。
すると、そのお宅では
ちょうどその頃、家族の誰かが
亡くなったのだそうです。
母は、火の玉を見たショックが
大き過ぎて、誰が亡くなったのかは
忘れてしまったみたいです。
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