怪・その45
ある朝の出来事
私が8歳になる年の春、
年の離れた弟が生まれ、
その2、3日後に母が産科から退院しました。
その日、私はいつものように
小学校へいく準備をしていました。
ものぐさな私は
トイレに行くのをぎりぎりまで我慢し
限界が近づいたところで
ダッシュでトイレに駆け込みました。
急ぎすぎたのでトイレの扉は半開きです。
用を足しているとトイレから見える洗面所に
女の人が入ってきました。
ネグリジェのような薄いピンクのパジャマをきて
髪は長めだったように思います。
あ、母だ。
と思った私はトイレの中から
「おかあさん」と呼びかけました。
しかし、無反応。
女の人は静かに櫛で3度髪をとき、
櫛をおいて洗面所を出て行きました。
そのあたりで私は
気づいてはいけないことに
いろいろと気づき始めました。
母は弟を産む前に
ショートカットにしたのです。
そしてその母は、
起きてはいましたが、そのとき布団の中にいて
すぐに外に行く用事もないため
髪をとく必要もなく
パジャマはズボンと上着の2ピース。
トイレの用をすばやく終わらせ、
私は女の人が櫛を置いたところへ
おそるおそる近づきました。
櫛は、ありませんでした。
よく晴れた午前7時の出来事です‥‥。
(ゆっきー)
2008-09-03-WED