おさるアイコン ほぼ日の怪談2008
怪・その46
心に何かが


今から15年くらい前、
僕がまだ高校生だった頃の話です。
僕の家は元農家だったこともあり、
平屋のだだっ広い家でした。
8畳の神棚がある部屋、
6畳の仏壇のある部屋、
廊下を挟み、
9畳の台所と続いています。

6畳の仏壇のある部屋に
TVが置いてあるので、
午後9時過ぎのお笑い番組を
ひとりで見ていました。

座椅子に座り、ケラケラ笑ってました。

ふと、台所の方が気になり視線を移すと、
台所の出窓の外を
白い服を着た女性が
横切って行くのが見えました。

「まったく、他人の家の敷地を
 勝手に通り抜けるなんて」
と、思ったのですが、

いや、まてよ‥‥。

その台所の出窓は、
地上から高い位置にあって、
身長177cmの僕が外に立っても、
中を覗けない高さ。

女性が外に立って、
その姿(腰より上)が見えるはずがない!

その瞬間、
さっきまでTVを見て笑っていたのに、
体が動かなくなりました。
覚醒している状態で金縛りです。
自分の心に徐々に
別の何かが侵蝕してくる感じがします。

そして、とてつもなく
悲しい気持ちに支配され、
「死ななければならない」という意思に
自分の意思が
飲み込まれていくのを感じました。

廊下を通りかかった弟が異変に気づき、
僕の身体を叩いたり、
呼びかけたりしてくれて、
ふっと金縛りが解け、
動けるようになりました。

僕の目からは、涙が溢れ、あごを伝い、
ポタポタ垂れていました。

後にも先にも、
起きている状態での金縛りはこれっきりです。
あの、首筋から何かが入り込むような感触は、
今でも忘れることができません。

(取り憑かれ男)
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2008-09-05-FRI