怪・その13
花子さん
小学校5年生の冬でした。
当時、「花子さん」や「人面魚」など、
小学生が喜ぶ怪談話がブームでした。
私と友人も例外ではなく、お昼休みに
「トイレの花子さん」を試したくなりました。
というのも、私の母校には怪談エピソードが多く、
「音楽室のピアノが勝手に‥‥」
「肖像画がちがう‥‥」など
エピソードが多かったのです。
だけど昼間だし、人も多いし、
まさか、と思っていました。
私の母校では
「3階女子トイレのドアを
32回たたくと花子さんがでる」
というのがルールです。
まさかと思いつつ、
でも怖いからトイレの中に入らず、
出入り口に一番近いドアを32回ノック。
シーン。
ほらね、何もないよ、
と言って帰ろうとした瞬間、
一番奥の扉が、
キー‥‥パタ‥‥と動いたのです。
私たちが叩いたのは、一番手前。
開いたのは、一番奥。
一番奥は、用具入れの扉です。
もちろんほかに、人はいません。
手前から奥まで、3個の個室を挟んでいました。
一瞬、友人と顔を見合わせ、一目散に教室へ。
ほかの友人に一部始終を話し、
今度は10人以上で、同じトイレへ向かいました。
そして同じ状況で、同じことを試してみました。
でも、扉が開きません。
気のせいだったのかな、
と笑って帰ろうとしたとき。
「○○ちゃん(私)、
背中に手のあとがついてる!」
私の真っ白なトレーナーの真ん中に、
人の手とは思えない、
もみじのような形をした手跡が残っていたのです。
泥のような茶色で、とがった指先。
アンバランスな指の長さ。
そして、影が残るほど強く押された跡でした。
もちろん、
そんなに強く押された覚えはありませんでした。
(I)
2009-08-13-THU