おさるアイコン ほぼ日の怪談2009
怪・その19
視線を感じて


私が大学生の時、
奈良の国道沿いの飲食店に
男友達の車で
晩御飯を食べにいった時のことです。

この国道はパチンコ店やファミレスなどが
道沿いに林立して
夜でもネオンできらきらしていました。

お店で食事を終えて、
大きな駐車場から国道に出ようとすると、
駐車待ちの車の列と対向する形になりました。

いくつかの飲食店や
大型書店の駐車場も兼ねているため、
国道に出ようとする車も混んでいて、
入ってくる自動車と一台ずつ
ゆっくりとすれ違っていきました。

ふと視線を感じて、対向車に目を向けた時でした。

その車の運転席に座っている男性が
こっちを凝視しているのに気付いたのです。

その男性は、信じられないくらいに
目と歯をむいていました。

上まぶた側は白目が見え、
歯はすべて人間と思えないくらい長く、
先端が尖っていて
私に向かって唇をめくり上げて
上下の歯を「イーッ!!」と
面白がって見せているようでした。

私は「え‥‥」と言ったまま
その顔から目が離せなくなりました。
釘付けとはまさにこのこと、
自分の意思で目をそらすことができずに
硬直してしまったのです。

その時、友達がその男性に気付き、
「見るな見るな、見るなってーっ!!」
と私の目を覆いました。

その後、その話は2人の間で一切しませんでした。
友達がしたくなさそうだったからです。

今でも国道のその場所を通るたび
ネオンに照らされ、
胸にハンドルを押し付けるようにして
こちらに向けられた顔と、
その歯を思い出します。

不思議だったのは、その男性の後部座席に
健康そうな小さい子供と、お母さんらしき女性が
無邪気に笑いあって乗っていたことです。

(h)


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2009-08-18-TUE