怪・その25
こっくりさん
小学校5年生のことです。
そのころ、「こっくりさん」という遊びが
はやりました。
紙に50音と濁点、句読点などと、
真ん中に鳥居を書いて、
そこに10円玉を置いて、
3人でその上に指を載せます。
こっくりさん、こっくりさん、と呼びかけ、
質問をします。
すると、10円玉が動いて50音の字の上に止まることで、
質問に答えてくれる、というものです。
たしか、こっくりさんとはキツネのことで、
キツネに聞くというものだったと思います。
霊の存在は受け入れつつも、ちょっと理屈屋の私は、
絶対誰かが10円玉を動かしている。
と、この遊びには否定的でした。
「ぜったい、こっくりさんが動かしている」と
主張してやまない友人たちに、
私が入れば、動かすのは他の2人の内
どちらかってことだから、
動かしている人が分かるに違いない、と思い、
参加してみることにした時のことです。
何を質問したかは忘れてしまいました。
10円玉は、なぜか動いて行きます。
「じ・が」となりました。
なんだ、やっぱり信じない人が入ると、
返事にならないじゃない。と、
集団心理というか、雰囲気にのせられることを
証明したようなつもりでした。
続けて、「な・い」。
「じ・が・な・い」です。
なにこれ、とみんなでじっと紙を見ていました。
すると気づいてしまったのです。
「ま行」が抜けていたことを。
ぞわっと鳥肌が立ちました。
誰かが「ま行が抜けているよ!」と言ったとたん、
周りの草木を急に
ざわっと風が吹き抜けてゆきました。
それ以来、
こっくりさんをする人はいなくなりました。
今でもその風の音を覚えています。
素朴な小学生には、
こんな手の込んだいたずらは
思いつけなかったと思います。
あの時私たちは、何かこの世のものでないものを、
呼び寄せてしまったのではないでしょうか。
ずっと、あの遊びを続けていたら、
大変なことになっていたのでは‥‥。
(N)
2009-08-23-SUN