怪・その1
「遺影を」
夫が学生時代のときのことです。
もともと夫の実家は霊感の強い人が多く、
死んだお爺さんが枕元に立ったのを
泥棒と勘違いしたりなどの
不思議な体験が多いのですが。
夫自身も霊感があるようで
こんな話をしてくれました。
その日夫は受験勉強が意外にはかどり
夜半から始めた勉強が
気付くと深夜になってしまっていました。
急にのどが渇いて、
麦茶でも飲もうと夫は台所へ、
台所の隣は仏壇間です。
麦茶を飲んで人心地すると
微かな音が仏壇間からしてきます。
『あぁ』
霊感の強い夫は
もう嫌な予感がしていたそうですが、
好奇心には勝てず
薄く開いたふすまの間から覗いてみると
明らかに家族でない人が
仏壇を覗き込んでいます。
「カリカリ」
前こごみになって
「カリカリ」「カリカリ」
手を伸ばして
「カリカリ」「カリカリ」「カリカリ」
異常な空気を放ちながら
『遺影をひっかいてるんだ!!』
夫は即座に分かったそうですが
あまりの空気に
その日は気付かれないように
上に行ってしまったそうです。
朝起きると
遺影と仏壇に供えてあった林檎が落っこちていて、
『一生懸命追っ払えばよかった』
そう思ったそうですが、
いまだに幽霊の放っていた異常な空気に、
ぞっとするそうです。
(メリーさんちのまりあ)
2010-08-03-TUE