怪・その13
「パソコンのキー」
あるデパートの改装工事で、
事務のアルバイトに行った時のことです。
レストラン街の中にあった
閉鎖したレストランを作業場にして、
そこにパソコンを持ち込んで
仕事をしていました。
そのレストランの中は荒れ果てていて、
枯れた観葉植物や鍋や食器が
散乱している状態で、
そこのオーナーは夜逃げしたという噂。
中に入ったとたん
油の腐ったようなにおいがして、
「イヤな感じだなぁ」という気がしていました。
一緒にアルバイトに来ていた友達は
特に霊感が強く、
「誰もいないはずのところで
椅子を動かす音がした」
とか
「今誰かが通った気がする」
などと言い出すしまつ。
私は半分怖いと思いながらも
半分は冗談と思って
おもしろがっていました。
そんなある日、
他の人たちは昼食に出掛けて行き、
友達とふたりだけで
電話番をしていた時のこと。
誰もいないはずなのに隅のほうでまた
ガタガタと椅子を動かす音がしたので、
友達と私はきゃーきゃー言いながら
幽霊だ、幽霊だ、と騒いでいました。
とはいえ、私は
「どうせなにかのまちがいだろう
風かなにかだろう」
と心のなかでは信じていませんでした。
すると突然、私のパソコンが、
どのキーを押しても
動かなくなってしまいました。
「あれ、おかしいなぁ」
あせったわたしは、
キーボードの左上にある「2」の
キーを何度か
ポンポンポンポンポン‥‥とたたきました。
すると突然画面にできてきたのは
「血血血血血‥‥」の文字。
友達と私は同時に
「ぎゃーっ!」と叫びました。
その後パソコンは元に戻り、
当然、何度「2」のキーを押しても、
画面には「222」としか
表示されませんでした。
なぜ急に「血」という字が表示されたのか、
今でも不思議でなりません。
(りちはな)
2010-08-13-FRI