おさるアイコン ほぼ日の怪談2010
怪・その12
「深夜タクシー」


これは私の母が実際に体験した話です。

もう二十年近く前になりますが、
真冬のある日、
母方の祖父の体調が悪くなり、
緊急入院をするという連絡があり、
夜に母は出かけて行きました。

夜も遅い時間だったので、
病院に向かうため
最寄り駅からタクシーに乗ったそうです。


母は、普段タクシーには
ほとんど乗らないのですが、
なんとなく、タクシーの中で
違和感を感じていました。
それでも、

「急いでるので助かりましたわ。
 時間も遅いから
 タクシーも少ないかと思って」

と言ったところ、運転手さんが、

「私はいつも夜のこの時間しか
 走らないんですよ‥‥」

と呟いたそうです。

母は、そうですか‥‥と言い
チラッとミラーを見たら、

その運転手は顔色が真っ青で
じっと見られないほど嫌な感じがして、
母は恐ろしくなり、
心の中でお経を唱え、

お母さん助けて!
神様助けてください!

と震えながら唱えたそうです.


目的地まではすぐについて、
お金を払って慌てて出ようとしたときに、

「チッ。
 お前も連れて行ってやるつもりだったのに‥‥
 運の強い奴め」

と言われたそうです。

次の日の明け方に、祖父は亡くなりました。

母は、祖父と一緒に
連れて行かれそうに
なっていたのかもしれません‥‥。


お葬式が終わったあとで
母からこの話を聞いたのですが、
話してるときの母の顔はとても怯えた表情で、
わたしは子供だったため、
ほんとうに怖かったです。

(ゆずぴ)


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2010-08-11-WED