怪・その20
「飛ばされて」
友人から聞いた、もう、30年も前の話です。
友人の実家の近くに、
今は廃線になった線路があります。
まだ友人が学生で線路が使われていたころ、
帰省中に、
人が列車にはねられる事故が起きました。
線路上に男の人が立っているのが見え、
運転手は、
急ブレーキをかけたのだそうですが、
間に合わなかったのだそうです。
列車の激しいブレーキの音に、
夜中の12時過ぎだったにもかかわらず、
近所の人たちが一斉に家から出てきました。
無残にも、その人の首は、
胴体から離れ、
線路脇に転がっていたそうです。
その後警察が到着し、
事故現場の検証を始めたのですが、
おかしなことに、
首から下が見当たらないのです。
ぶつかった勢いで、跳ね飛ばされたと考え、
範囲を広げて捜しましたが、見つかりません。
ややしばらくして、
何気なく空を見上げた捜査官が
悲鳴を上げました。
捜査官の目線の先は電柱の上でした。
そこには
首の無い胴体が
しがみついていたそうです。
(さい たまこ)
2010-08-18-WED