怪・その22
「寒い朝」
3月のある寒い朝の5時頃、
タクシーを待っていました。
仕事が忙しく、
これから出社するところです。
まだあたりの暗いなか
交差点に立っていましたが、
タクシーどころか
普通の車すらも通りません。
道路をはさんだ向かい側に
自転車に乗った女の人が現れ、
信号が青に変わるのを待っていました。
後ろの荷台に乗っているらしい
子供の脚が見えています。
こんな朝早く、まだ寒いのに、
いったい子供をどこに連れていくんだろう?
急な病気なら
タクシーか救急車を呼ぶべきでは?
ちょっと憤慨しながら、
お母さんを見ていると、信号が変わり、
こちらに向かってきました。
自転車が私の横を通り過ぎる時、
見ると、
お母さんの後ろの荷台の上には何もなく、
子供の脚だけがぶら下がっていました。
(山)
2010-08-20-FRI