怪・その37
「幼なじみ」
ご近所の老婦人が、
長年連れ添ったご主人を
この冬に亡くされました。
最近、
未亡人となったその老婦人のところに、
奥様を亡くされたご老人が
訪ねてくるようになりました。
まあ、よくある話なのですが。
実は、訪ねてくるご老人は
ずいぶん昔にその未亡人となった方に
結婚を申し込んで断られていました。
そして結局、
その老婦人の幼なじみと結婚されたとか。
その老婦人がうちへきて話すには、
亡くなったご老人の奥様、
つまり自分の幼なじみの姿を、
最近、
家の中で見るようになったというのです。
玄関で両手を広げて
人を入れないような格好をしていた、と。
自分の夫を老婦人の家に
入れたくない思いでしょうか。
さらにはもっと前、
その幼なじみが亡くなった後、
老婦人が夜中に苦しくて目をさましたところ、
布団の上に幼なじみのその人が
覆いかぶさるように乗っていて
こちらを見ていたというのです。
そのときからもう、
その亡くなった幼なじみは
自分の夫が
この老婦人のところに来ることを
分かっていたのでしょうか。
(こぢんまり)
2010-09-01-WED