怪・その40
「もうひとつの坂」
私の母校である中学校は高台にあって
登校するには、
3本ある坂のうちの
どれか1本を登らないといけません。
1本は
ショッピングセンター側に住む生徒が利用して、
反対にあるもう1本は
商店街側に住む生徒が利用します。
残る1本は、2本の坂の間くらいにある、
すぐ隣に木々が茂った、薄暗く急勾配な坂。
その坂を使う人は滅多に居ません。
急過ぎるのも大きな理由のひとつですが、
実はもうひとつの理由があります。
“その昔、坂の途中にある木で
誰かが首を吊った”。
といううわさがあり、
「首吊り坂」と呼んで気味悪がり、
誰も通らないのです。
地元の人なら、
何となく聞いたことのある話、でした。
けど、“何となく聞いた事のある話”だけに
迷信に近い認識。
私も特に気に留めていませんでしたが、
中学3年のある日、友人が私にこう言いました。
「あの坂を通ってみたら
1本だけ木が枯れてて、
そこにお社みたいなものがあったよ」
と。
私は事実を目にする事が怖くて、
それ以降も、坂には一切近付いていません。
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2010-09-03-FRI