怪・その41
「ふたりの願い」
この話には、超常現象などは
なにひとつ出てきません。
ただ、どうしても、
そのときの状況が理解できない、
というエピソードです。
仕事の関係で、
滋賀は大津、比叡山のふもとにある
大きな神社に足を運びました。
仕事とはいえ
誰かに会うというようなたぐいではなく
ただ神社を見て回るに近い
気楽なものだったので、
妻を伴って参りました。
本堂はとっても立派で荘厳なもので、
楼門にいくつもの絵馬がかけてありました。
みんなどんな願をかけているのだろう、
という冷やかしに近い感覚で
私は絵馬の文句に目を走らせました。
するとそこには、
若い女性のものと思しき字で
「ずっと□□と一緒にいられますように。
○○」
と書かれてありました。
きっと恋人同士で
この絵馬をかけたのでしょう。
よくある、ほほえましい願だと思いました。
日付けは今年の4月末でした。
ところが
そのとなりには、同じ日付で
「○○と再会できますように。
□□」
と、男性側からの願がかけてあるのを
見つけてしまいました。
腑に落ちません。
なぜ男女で来て別々に絵馬をかけ、
女性はずっと一緒にいられることを願い、
男性はいつか再会できることを
願っているのでしょう。
ふたりは4月末のその日
いっしょに来ていなかったのでしょうか?
女性はとなりに男性がいると思っていて、
男性はいないと思っている。
その後、ほかの絵馬も見て、
我々が訪れる以前に
その男性は、
少なくとも2回は来て、
おなじように願をかけていたらしいことが、
近くの絵馬からわかりました。
どれにも、
「○○と再会できますように。
□□」
と書かれていました。
(キノタク)
2010-09-03-FRI