怪・その23

「廊下を歩いている」

私の部屋には、大きめの窓があります。
その窓の外を開けると、
隣のアパートの階段や
共用廊下が見えるようになっています。

夜中、2時を回っていました。
私は寝付けず、
ベッドに寝転がってゲームをしていました。

その脇には、この大きな窓。

カーテンの向こうから

「シャッ、シャッ‥‥」

という音が聞こえてきました。

隣のアパートは外壁修繕中でしたから
薄いシートが風で揺れているのだろう‥‥

いや、違います。

それならこんな規則的な音にならない。

薄手の、シャカシャカした素材のスポーツウェア、
あれの衣擦れの音だ、と思いました。

シャッ‥‥シャッ‥‥シャッ‥‥
シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ――
シャッ‥‥シャッ‥‥シャッ‥‥
シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ――

暫く歩いては立ち止まり、また歩き出す。
そんな様子でした。

こんな夜中に、
誰かが隣のアパートの廊下をただ歩いている。

カーテンから覗くと、
どこにも誰もいませんでした。
音も止んでしまった。

あれ?

網戸も開けてみましたが、
やはり誰もいません。

おかしいな‥‥と思いながら
網戸とカーテンを閉め直し、
ゲームを再開しました。

そうすると少ししてまた、

シャッ‥‥シャッ‥‥シャッ‥‥
シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ、シャッ――

誰もいなかったじゃないか、
規則的に聞こえるけど、
シートが風で揺れてるだけだ。

そう思った時でした。


コンコン。


隣のアパートのどこかの部屋のドアを
ノックする音でした。

誰かがいる。

ドアが開くのを待っている気配がする。

私は窓を閉めました。


翌朝はいつも通りでした。
そういえば、
ドアが開く音もしませんでしたが、
その誰かが歩き去る音もしませんでした。

何だったのかは分かりません。

(春巻き)

こわいね!
2014-08-26-TUE