怪・その39
「ずっと、家族」
実家を改築する間、
借家に引っ越しした時の話です。
大学1年生で父を病気で亡くし、
「私が早く働いて、
母を支えなくては!!」と、
働いてお金を稼ぎ、
自分が母を養っていくと
覚悟を決めるための実家改築でした。
「お父さんは、
こんな私をどう思うかな。」
そう思いながら、
借家に沢山の段ボール箱を入れ終わった頃、
母が玄関先で
「そろそろ昼ご飯でも食べようか。」
と言いました。
「でも、疲れたから
お弁当か何か買ってこようかな。」
と母が続けた、その時。
ひょこっと、
母の背中越し、に
父が立っていました。
疲れた、と言った母を
労るような眼差しでした。
不思議と恐怖感が湧かず、
(あ、お父さんだ‥‥)と思った時。
ふっと消えて。
同時に母が、
「じゃあ、お弁当3つ買ってくるね。」
それは父が亡くなって9年目、
私と母は、2人家族。
母を気遣う父と、
無意識に父を感じる、母。
いつまでもお互いを想う2人に、
あたたかい気持ちになりました。
父を見たことは、
母には言えていません。
言ったら、きっと泣いてしまうから。
これは、
霊感の無い私が、
唯一、父の霊に会えた、
秘密の思い出。
きっと、
無事に改築が終わった家に
住む私たちを、
今も変わらず
見守ってくれてると思います。
(しじみのうた)