怪・その36
「扇風機の音に混じって」
あれは15年前くらいの夏の夜。
ちょうどお盆あたりで、
暑くて寝苦しい日だったと思います。
狭い部屋で扇風機を強風で回し、
壁際によせたベッドに横たわっていました。
壁に向いた姿勢で
ウトウトまどろみ始めた頃‥‥。
私の背後に置いてある扇風機の
ブーーンという音に混じって、
「キャハハ‥‥ウフフフ‥‥」
という子供の楽しそうな笑い声と、
部屋を駆け回る足音が
背後から聞こえ始めたのです。
それも、数人。
最初は「夢かな?」と思っていましたが、
それにしてはハッキリと聞こえてくるし、
あれよあれよという間に
声と足音は増えていくしで、
気がつけば「ここは幼稚園か」と思うような
にぎやかさになっていました。
狭い部屋中に子供達の笑い声が響き渡り、
背後の方向を確認する勇気もなく、
いよいよ「これは夢じゃない‥‥!!」と
恐怖に震え始めた瞬間。
パシンッ!
後頭部を叩かれたような衝撃がありました。
小さい手に、叩かれたような。
思わず「いたいっ!」と叫んだとたん、
笑い声も足音も消えてしまい、
扇風機のブーーンという音があるばかりでした。
あっけにとられて
「やはり夢か」と思いかけましたが、
後頭部にはまだ
ハッキリと叩かれた感覚が残っていて‥‥。
少し不思議でゾッとしたお盆の夜でした。
(のほほん)