怪・その39
「足音だけでも」
先月、実家に泊まりに行ったときのことです。
実家は2階にLDKがあり、
その横の和室に布団をしいて、
本を読みながらうとうとしていたら、
猫が
部屋に入ってくる気配がしたのです。
猫の静かな足音が、
とすとすと布団のまわりを一周して、
途中、布団に入ろうかな、
どうしようかな、
とちょっとだけ立ち止まり、
結局そのままふらりと
出て行ってしまいました。
実家の家族はみんな猫好きで、
一時期は4匹もいたのですが、
去年、最後の1匹が老衰で死んでしまって、
今はいません。
最後の子はぽんたという猫で、
母の入院中、
父が病院の付き添いから帰ったら
リビングで死んでいたということで、
ひとりで死なせてしまってかわいそうでした。
ぽんたはやや人見知りな猫だったのですが、
年老いてからは甘えるようになり、
私が実家に泊まると
夜中にそろりと部屋に入ってきて、
気が向くと一緒に寝てくれる子でした。
ああ、今の感じ、ぽんたの足音だったなあ。
と思い、足音だけでも聞けたことが、
少しうれしかったです。
(ぽんた)