怪・その41
「校舎の見回り」
40年以上小学校に勤務し、
いくつかの学校で不思議な体験をしている私ですが、
その中の一つを紹介したいと思います。
今から10年以上前のことです。
とある小学校の教頭をしていた私は、
毎日、最後に学校の戸締まりの確認をし、
玄関の施錠をして帰宅するのが日課でした。
いつもは数人の先生方が職員室に残り、
私が見回りを終えるのを待って
一緒に学校を出るのですが、
その日は、
翌日までに終わらせなければならない仕事があり、
9時過ぎまで残っていました。
気付けば他の先生方は全員帰ってしまい、
誰もいない校舎の見回りを
しなければならなくなりました。
とは言え、毎日のことでしたので、
別に怖いとも思わず、
4階建ての校舎の見回りを始めました。
いちいち教室や階段の電気をつけるのも
めんどくさいので、電気はつけずに、
懐中電灯で辺りを照らして、
戸締まりを確認しながら
4階から1階に向かっていきました。
そのうち、私は奇妙なことに気付きました。
校舎内には各階にトイレが数カ所あるのですが、
私がトイレの前を通るたびに、
トイレの換気扇が回り始めるのです。
私は変だなあとは思ったのですが、
男子トイレなどは数10分毎に水が流れるように
自動洗浄の設定がしてあったので、
換気扇も時間で自動的に回るように
なっていたんだっけ? などど思い、
あまり気にしませんでした。
もし、自動的に換気扇が回るような設定に
してあったとしても、
私が通るたびに回り始めるなんておかしいし、
夜の使っていないトイレの換気扇を
自動的に回すような設定なんてあり得ないのに、
その時は、ちょっと変だなあぐらいにしか
感じなかったのです。
戸締まりを終え、玄関を施錠し、
私は帰宅して、いつものように
12時頃に就寝しました。
午前2時、私は突然目を覚ましました。
部屋の明かりがついているのです。
明るい部屋では眠れない私が、
消灯せずに寝るはずはない。
どうして?
でもさらに、
もっとびっくりする出来事が起きていました。
隣の部屋から大音響の音楽が聞こえるのです。
隣の部屋にあったCDプレイヤーが
勝手に鳴っているのです。
そんなばかなと思いましたが、
夜中に大きな音を出しては
近所迷惑になるととっさに考え、
あわてて電源を切りました。
そうして私はやっと気付きました。
私は学校から家に
誰かを連れてきてしまったんだと。
その人は、私があんまり鈍いので、
教えてやろうと
家までやってきたに違いないと。
その後、同じような、
電気を介した不思議なことは
起きていません。
(m)