怪・その43

「お盆の通り道」

私は田舎の食品工場で働いています。

その工場は昔から、
お盆前になると白い人影が通路を通っていく、
という話を聞いているところで、
通り道になっているようでした。

数年前の夏の日、定時になったので
同僚と戸締りをしに行こうとしていました。

工場の一番奥には薄暗いボイラー室があり、
その部屋も出るといううわさがありました。

他の社員やパートさんはもう上がっていて、
シーンとした工場の中、
戸締りをしようと
事務所のドアを開けたとき、

奥のボイラー室から明らかに

女の人の甲高い笑い声が聞こてきたのです。

キャハハハハー。

事務所にいた同僚を振り返ると、

今の聞こえたよな？
パートもみんな帰ったよな？

と言ってきたので、
自分だけじゃなかったんだ、と思いましたが、
不思議と怖いという感じはありませんでした。

一応ボイラー室をのぞいてみると、
だれもいなく、その日は帰りました。

後日パートさん達に聞いてみると、
ボイラー室から菊の花の匂いがしたとか、
人影を見たとか、
曰く付きの工場だったそうです。

（ａ）