怪・その58
「はっきり聞こえた」
当時私は小学3年生でした。
今でも鮮明に覚えています。
その日は家の畳の上で「ひまー」と言いながら
ゴロゴロと一人で転がっていてました。
外からは子供達の遊ぶ声が聞こえ、
家の中に綺麗な夕日の光が差し込んで、
隣の台所で母が夕飯をトントンと音を立てて作っていました。
ヒマヒマ言っていると、
急に耳元で
「どうしたの?」
と女の子の声がしました。
絶対に子供、しかも女の子。
外からじゃない。
はっきりと耳元で聞こえました。
でも、家の中には母と私しかいません。
母に聞いても「何も言ってないよ」といわれました。
それから、家にいると
1〜2週間おきくらいに
女の子の声ではっきりと
「どうしたの?」
「遊ぼうよ」
と何度も聞こえるようになりました。
ある朝、ベットの上で背伸びをしていると
はっきりと
「バイバイ」
と聞こえました。
私の隣では中学生の姉が着替えをしていました。
今まで近くに人がいるときは
声が聞こえることはなかったのですが、
さすがにこれなら
姉も聞こえたはずと思って
聞いてみましたが、
何も聞こえなかったと言われました。
私は殺されるという意味なのでは?!
と思い、
不安でしたが何事もありませんでした。
そして、その日から声は聞こえなくなりました。
私は二十歳になるまで
この話を誰にもしませんでした。
子供ながらに怖すぎて家族にも言えませんでした。
でも、フッと思い出して話したのです。
私は声でしたが、
兄は2〜3歳くらいの頃に
何もない天井の方を指差して
「あそこにいる。ほら、動いた」
と言っていたそうです。
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