怪・その10

「噂の池」


僕が以前、お世話になっていた
美容師のKさんの身に起きた不思議な話です。

Kさんは東京で美容師をする前に
秋田の方で働いていました。

彼の趣味は釣りで、
ある夏の休日に車を飛ばして
地元の池に釣りに行きました。

その池は釣りスポットでもあり、
地元の人が「河童が出る」と
噂をする池だったそうです。

Kさんは車を池の近くに止めて、
釣り道具を下ろし歩きはじめました。

すると、男性と思しき小柄な人が
池の側にぼーっと立っているのが見えました。

Kさんは

「あ〜、先にやってる人がいるな。
釣れるかどうか聞いてみよう」

と思い、男性の方へ歩みを進めます。

Kさんは男性に近づくに連れ、
違和感を感じたそうです。

その男性は
全身真っ黒な出で立ちだったそうです。

服や影ではなく、肌が真っ黒な色をしており

上半身裸で、腰に何かを巻いている姿で、

頭のてっぺんが禿げ上がっていたそうです。

その男性は池の方を向いていました。

Kさんはその男性の後姿に、
なにかおかしいと感じて足を止めました。

その気配を男性が感じたのか
男性の背中に
少し力が入るのをKさんは見ました。

Kさんはその時に手に
水かきがあるのにも気が付きました。

いよいよこの男性が
普通の人じゃないと確信したそうです。

と、同時に、その男性がこちらを振り向きました。

Kさんはその男性の顔に驚愕しました。

本来、鼻がある部分は穴だけ空いていて真っ平らで、

目が異様に大きく、猫のような目をしていました。

その目の瞳孔が
キュッと小さくなる瞬間を見て

「まずい!」とKさんは直感しました。


そして次の瞬間気がつくと
彼はなぜか、車内の後部座席にいたそうです。

一体何が起こったのかわからず時間を見ると
あまり時間は経っていなかったそうです。

あの男性の顔が今でも忘れられないと
Kさんは言っていました。

(i)

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