怪・その25

「布団の上を」


これは、家族の中で誰よりも霊感の強い、
私の4歳上の兄が
二十歳くらいだった時の話です。

当時は私も兄も実家暮らしで、
父母と私と兄の四人で生活していました。

兄は、仏壇のある和室で生活していたのですが、
ある晩、なぜか夜中にふと目が覚めてしまったそうです。

普段は、
一度寝たら朝まで起きる事のない人でしたので、
自分でも
「おや?こんな時間に目が覚めるなんて?」
と不思議に思った兄。

そして、引かれるように
足元の方にある仏壇に目をやると、

扉の開いたままの仏壇の中から、

白いモヤの塊のような人型が

ボワーッと出てきたそうです。

うわっ! と思った兄が、
恐怖のあまり声も出せずに固まっていると、

その白い人は、
兄が寝ていた布団の上を

ポン、ポン、ポン

と歩いて行き、

そのまま兄の枕元に正座し
(なぜか正座していると分かったそうです。)、
うっう〜っと低い唸り声をあげながら、
兄の顔をじっと見つめていたそうです。

そしてしばらく唸ったあと、
来た時と同じように
兄の布団の上をポン、ポン、ポンと歩き、

スゥーっと吸い込まれるように、
また仏壇の中に帰って行ったとのことでした。

兄いわく、兄が謎の白いモヤに唸られていた間中、
リビングで寝ていた、その当時飼っていた犬が
ずっと何かに唸る声が聞こえていたそうです。

犬も何かただならぬ気配を
感じていたのでしょうか‥‥。


兄は10年以上経った現在でも、
あの時の仏壇から出てきた
白い人型の塊が
布団の上を歩いた時の感触を思い出すとゾッとする、
と言っています。

仏壇から出て、仏壇に帰ったということは、
我が家のご先祖様なのかな? と思いますが、
兄に何か訴えたいことでもあったのでしょうか?

枕元まで来たなら、
唸ってないで直接言ってくれ。と思いますが。

(さくら)

こわいね!
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2019-08-22-THU