「裏返った札」
高校の夏休み。
弓道部に所属していたぼくは、
昼の練習を終えたあとも家に帰らず、
部室で他のメンバーたちと
のらくら過ごすのが日課になっていました。
ある日、いつにもまして話に花が咲き、
気がついたら夜になっていました。
夜中。
部室に隣接している弓道場から
「ガッシャーン」
という大音響が聞こえました。
弓道をやったことのあるひとならわかる、
ジュラルミン製の矢を複数本、
床にたたきつける音です。
「侵入者か!?」と思い、
あわてて道場に行ってみると、
そこにあるのは静寂のみ。
戸締まりも完ぺき、
矢もすべて所定の場所に収められています。
その時、部室に残っていた全員が聞いた
あの音はいったい‥‥。
あ、そうそう、ぼくらの弓道場には
歴代の部員達の名前を書いた木の札が
さげられていて、
そのなかで1枚だけが裏返っているんです。
先輩の話によると、
弓道の的をしまっておく「看的小屋」のなかで
在籍中に自殺をした生徒の札だそうです‥‥。
*画面が揺れたって? そんなバカな‥‥ |