「なぜ、ここに？」 数年前の、ある暑い夏の夜に経験したことです。 真夜中、ふと目を覚ますと、寝室の片隅の、 窓の外から入ってくる街灯の青白い光の中に、 彫りが深くて色の白い、 外国の人が三人立っていました。 女性が二人、男性ひとり。 両脇の男女は、 “なぜ、わたしたち、ここにいるんだろう？” というような、呆けたような顔をしているのですが、 真ん中の背の高い女性だけが眉間にしわを寄せ、 私をじっと睨んでいました。 なんだっ？　と驚いて飛び起きると、 もう、だれもいません。 ただ、青白い光が ぼうっと差し込んでいるだけでした。 その朝、すぐ妻にその話をしたときは、 あまり本気で信じた様子ではなかったのですが、 翌日、青い顔をしてその日の朝刊の地方版の記事を 私に見せます。 私が、その三人を見たのとほぼ同じ時間に、 市内の国道で、日本に出稼ぎに来たと思しき ルーマニア人の男女三人が、 交通事故で即死したとの記事でした。