「奇妙な合奏」
中学時代、私は吹奏楽部でした。
夏に開催されるコンクールに向け、
音楽室で合奏していると、いきなり
「先生」
と声がしたのです。
顧問の先生はその声を聞いて合奏を止めました。
だれだ、と問いかけましたが、誰も返事をしません。
気を取り直して、その場は合奏を再開しました。
合奏練習が終了した後、皆で話をしていたとき、
「そういえば、途中で止めたの誰だったの?」
とさきほどのことが話題に上りました。
するとある子は
「途中で止めるなんてT(私)しかいないと思った」
と言います。
私は合奏を止めてなどいません。
私は、と言えば、
パーカッション(打楽器)の方から聞こえたのです。
打楽器の子はホルンを指差し、
ある子はトランペットを指差し、
ある子はコントラバスを指差し、
ある子は‥‥
結局皆、てんでばらばらなのです。
結局誰が止めたのかはわかりませんが、
これだけは確実にいえます。
あのとき、誰がが
「先生」
と震えるような声で言ったこと‥‥。
ちなみに、私の中学校は野戦病院だったそうです。 |
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