この不思議なお話は、前回からの続きとなっています。
第1回からお読みください

『トントンさん』その4

はじめから、この場所で起こったのではなかった。

最初にもらったメールを読んだ時から、
「これは、昔の人が名づけたところの、
 あの有名な『座敷わらし』ではないか?」
というひっそりとした予想は、はずれたようになりました。

とはいえ本来、座敷わらしそのものも
未確認のものなので、
当たる、はずれる、という問題ではないのですが。

やはり、すでに名づけられたものへおさめて、
安心したい気持ちが、自分にはあったようです。


不思議さを増しながら、
それでもどこか、楽しかった思い出のように、
仲の良い3世代の家族、母、娘、孫の話は、続きました。
お母さま 話して、トントンって返事があって、話してると、
「あの人、変になっちゃった?
 1人でしゃべってる」と思われるでしょう?
だけど、S子ちゃんがいたからね、私もしゃべったの。

もっともっとしゃべりたいけど、
でも、私も頭、変になったら、困るしね。
そんなもんとしゃべってて。
ほぼ日 そうなっちゃうんじゃないかっていう怖さも
あったんですか?
お母さま ちょっとあったね。
それで呼んできたの、友だちを、ここの。
みんなで体験してるの。
ほぼ日 あの、画像を送っていただいた、腰紐ですか。
K子さん これがその紐で。
お母さま それ、私の腰紐ね。
K子さん これが、エプロンなんですけど。
ほぼ日 エプロン? 団子のようになってますが‥‥。
K子さん これとこれだけ、今、母が持ってます。
同じ人がやったような感じですね。
(ほかの結ばれた紐やハンカチなどは、
 今回の取材のために、
 お友だちからお預かりしていただきました。)
お母さま 結んで、投げてくるんです。

だからね、友だちに、
「来て。私、頭が変だと思われたら嫌だから、
 ちょっと、あなた、見て」って言って。
そうしたら、お友だちも、3回くらい来たの。

そして、これ持ってきて、
みんなキャーキャー、キャーキャー、
最初は怖がってたけど、
また、別のお友だち連れて来て。
「また体験させて」って言ってね、
来て、やっていくの。

ほぼ日 K子さんは、そこまでとは、知らなかったと。
お話を聞いてた時は、どう処理してたんですか?
その、信じなかった頃は。
K子さん 信じなかった頃は、気にもせず、何も。
もう、ちょっと聞いてすぐ、S子だって。
この子がやってると思って(笑)、
疑いをかけて。
ほぼ日 S子さんも、「じゃあ、まぁいいや」
みたいな感じだったんですか?
S子さん ママ、聞かへんもん。
K子さん 最初から、そういう感じやったので、
「ママ、聞いて」と、
「こんなことがあった」っていうふうには
言わなかったので。
お母さま 「怖いよ」って言わないしね、
全然みたいよ、この子は。
ほぼ日 それが、
何かのはずみで聞き始めたんですよね。
K子さん 聞いてたんですね、
いとこのお姉ちゃんは、信じてて。

で、そのお姉ちゃんが一昨年来て、
「何か出るかい?」って聞くので、
「えぇ? ほんまやったんかな」と思って。

で、ちょっと確かめようと思って、
聞いたら、まぁ言うわ、言うわ(笑)。
もう堰を切ったように。
お母さま 言うわ、言うわ、もう。
前は「あかん言うから」って言って
怒ってたもん。
ついね、しゃべって、夢中で。
あんまりにもいろんなことがありすぎて。
K子さん それで、ちょっと落ち着いて聞けたので、
そこで、「本当やったんかなぁ」と思って。
ほぼ日 へぇー。
お母さま それが、子どもは、案外、さっぱりしてるのね。

不思議がらないのよね。
でも、向こう(母屋)の子どももそう。
チャンチャカ、チャンチャカ、
一晩中一緒にやってたのに、
もう次の日、ケロッとして、何も言わん。
ほぼ日 そうなんですか!
お母さま 私ら、不思議で不思議で(笑)。
誰かに聞いて、笑われるかなぁと思ってね。

この人(K子さん)は
「S子がやってる」とかね。
この人、いつまででも起きてるから。
あっちで、テレビとか見たりしてるから。
S子さん 「うるさい、うるさい」って言ってな。
お母さま うるさいかってんもん(笑)。
キャッキャ、キャッキャ、やってる時。
S子 「テレビが聞こえへん」みたいな。
K子さん 2人でさ、キャーキャー言ってるんでね。
本当、ギャーギャーうるさくしてた時も、
「もう、うるさい」って怒ったことがあります。
お母さま S子ちゃん、もう夜、布団入ったら、
トントンって。
で、タララララン、タラララランってして。
そうしたら、ギーッて、
ものすごい音で叩くんですよ、そこを。
私の歌を真似して、チチチチ、タタタタって。
S子ちゃんが
「ばあちゃん、終わらないよ」って言うんですよ。
ほぼ日 なんか楽しかった感じします、その時。
お母さま 私らのあれは、怖いことも怖いけど、
そんなに怖くないね、全然。
ほぼ日 そうなんですよね。

お母さま 遊んでるのと一緒で。
楽しんでるみたい、向こうも、こっちもね。
この子がいたから。
不思議ね。
ほぼ日 何かを伝えるとか、教えるとかじゃなくて。
K子さん それじゃないですよね。
お母さま ただ、遊んでる感じでしょ?

先祖がね、なにか教えてくれたとか、
そんなんじゃないもんね。
で、うちに、そんなような先祖もいないし。
ほぼ日 話をうかがってると、
だから、なんかこう、純粋なものを感じますね。
遊びたいというか、なんか、ただある感じが。
お母さま そうかしらね。ただ遊びたいっていうかね。

すごいもう、遊んでたね。
引き出しを、階段みたいに開けたり、
わたしの歌に合わせて、トントン叩いたり。

言ってる本人が、わけわからないけど(笑)。

本当に、毎晩だったもんね。
毎日、毎晩ね、遊んでたね。
ほぼ日 もし、今また何かあったら、
聞いてみたいこととかありますか?
お母さま 聞いてみたいことねぇ‥‥、別にね。
こっちもないし、向こうも(笑)、
目的ないんじゃないの? ねぇ。
不思議だわ。ただ、不思議で不思議でね。
ほぼ日 そうですね。
K子さん 昨日も呼んでみてんけど、出ぇへんかった(笑)。
ほぼ日 あ、あ、呼んでみたんですか?
お母さま そんなわけないですよ。
ほぼ日 そうですね。約束したんですもんね。
お母さま そう、私も怖かったからね、
「1人になったら、出ないでね」って言ったらね、
「うん」って、こう(トンと畳を叩く)したの。
それっきり、出ない。
ほぼ日 これから、また何かあるかもしれないですけどね。
お母さま どういうタイミングだったかね。
S子ちゃんが子どもだったからかな。

ほんとうに、何も知らんでね、
騒いでたから、2人で。
ほぼ日 ずっとふたりは仲良しなんですね。
S子さん はい。

※お母さまとS子さんの昔の写真です。

おうちの写真を取らせていただき、
お母さま、K子さん、S子さんと記念撮影をして、
辞したわたしたちでした。

不思議さは、募るばかりで
晴れることはまったくありませんでしたが、

『そういうことはあるんだ。』

と、強く、感じました。

K子さんいただいたメールのことばが
何度も浮かんできました。
トントンさんは、ばあちゃんとS子が
楽しく遊んでいたから、
ただ仲間に入りたくて、
一緒に遊びたくて現れた何か、です。
目的も、理由もない、純な、なにか。

そういうものがあるのだと、知りました。


最後に、わたしからも、今一度。

全て実話です。
<おわり。>

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2013-07-31-WED

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