ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。
2008-06-24-TUE
インテル対ACミラン、駆け引き激化。

毎度おなじみの、インテル対ACミランの
ライバル意識合戦ですが、
ここへ来てその会長同士の駆け引きが
激化しています。

イタリア3大チームの一角を担っていたユヴェントスは、
まだ首位争いには参加できない状態で、
今季はASローマについで3位でした。
ACミランは5位とでおくれましたが、
今季優勝のインテル会長マッシモ・モラッティの
真の対決相手は、やはり
ACミラン会長シルヴィオ・ベルルスコーニです。
見栄っ張りで功名心に燃える性格においても。

シルヴィオ・ベルルスコーニは
巨大な規模のテレビネットワーク
Mediasetのオーナーであり、
一方のマッシモ・モラッティは
(弟ジャンマルコと共に)、
民間業者としてヨーロッパ内で
最大手の石油精製業者のトップです。
この二人がひとたびACミランとインテルの舵を取る時、
カルチョ界の莫大な借財をカバーするほどの
大金が動きます。

そして、忘れてならないのは、
この春、ベルルスコーニが
3度目の首相の座に返り咲いたということです。
この職務の特権を、
彼が見逃すはずはありません。

franco

モラッティ、世論とも戦うはめに。

さてインテルはマンチーニ監督を解雇し、
モウリーニョ監督と年俸900万ユーロで契約しました。
これはACミランのアンチェロッティ監督の
年俸の3倍です。

そればかりでなく、モラッティは
UEFAチャンピオンズ・リーグに目標を定めていますから、
他のチームとの違いを出してくれる
外国人チャンピオンたちを購入しようとしています。
今季のカンピオナート5位で
来季のUEFAチャンピオンズ・リーグに参加できない
ACミランはお先真っ暗な状態になる可能性もあります。
そこで黙っていないのがベルルスコーニで、つい先ごろ、
「インテルがカルチョのために使う金額は
 スキャンダラスだ。
 ガソリンが高いのは、
 イブラヒモヴィッチのような選手に
 大金をバラまいている石油業者のせいでもある」
と公言して、モラッティに釘をさしました。

franco

もちろん、ベルルスコーニは、
彼がイブラヒモヴィッチの報酬よりもっと多額を、
自チームのカカに支払っている事には触れません。
そして、彼の内閣の財務大臣であるトレモンティまで、
「モウリーニョは稼ぎ過ぎだ。
 石油業者たちにペナルティーを課すための税金を
 有効にしても、不当ではあるまい」
と、暗にモラッティに噛み付きました。

イタリアでは、ガソリンが
1リットル1.50ユーロ(約251円)で、
世界中のどの国より高いと思います。
そこで、これにまつわるある種の議論をぶちあげれば、
政府に対する庶民の非難の矛先をそらし、
責任を転嫁して政府の人気を保つことさえできます。
「ガソリン料金が高いのは石油業者たちのせいだ、
 彼らからもっと税金を取ろう」
と提案する財務大臣に、
庶民のだれが反対できるでしょうか?

こうしてモラッティは、
新監督がチーム強化のために希望する選手、
たとえばランパード、デコを購入するのが
難しいだけでなく、
ベルルスコーニ自身がコントロールしている
テレビや新聞などのマスコミや世論とも、
戦わねばならない格好になりました。
何はともあれ、
イタリアが経済的困難の中にある時期に、
庶民にとっては天文学的な数字の大金を
選手や監督のために浪費することについては、
議論を投げかけるということだけでも、
やはり庶民からの大きな支持を集めるでしょう。

事実上、スポーツのライバル対戦が
政治的闘争にまで広がったわけですが、
そこではベルルスコーニが
首相の座という良い武器を持って
カルチョ的ライバルを批判し、
自身の人気をも高めようとしております。

何年も前にはACミランが
ベルルスコーニに「勝つ男」としての名声をもたらし、
今は、そのベルルスコーニが
不調なACミランに貢献しているということになります。
立場は変わっても、本質に変りはないのですけどね。


訳者のひとこと

私は車を持っておりませんが、
ガソリン1リットル250円というのが、
とんでもなく高いということはわかります。
日本でも1リットル200円台は時間の問題と
言われているようですが‥‥。

ちなみに消費税もイタリアでは20%ですし、
光熱費も日本よりずっと高いはずです。


confetti

翻訳/イラスト=酒井うらら



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