いつも呼べば かならず来るよ
「だいじょぶさ」と 胸はって
いつも呼べば かならず来るよ
笑いながら 駆けてくる
何ひとつ取り柄もない
力もない 知恵もない
ともだちが いてくれる
葬式まで たぶん来てくれる
「ゆうがたフレンド」より
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── |
ムーンライダーズは
どこまでやるんでしょう。 |
慶一 |
どこまでやるかは全くわからないな。
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── |
わからない。 |
慶一 |
ずっと解散はないでしょうねって
言ってたんだけれど、
それは25周年ぐらいまでで、
30年になるともう何もわからない、先は。
誰か死んだら解散って言ってたよね。 |
── |
40代くらいまでは
誰か死んだら終わりだなみたいな
言い方をしていたのが、
全員が50代をむかえて
「ゆうがたフレンド」を御披露目した
30周年記念コンサートでは、
「2人になるかもしれないし、
4人でやるかもしれないし」みたいな、
大変あいまいな表現を。 |
慶一 |
あいまい。
あいまいっていうのは何でかっていうと
そういうふうに
1人消えちゃうかもしれないということが
非常に現実化したってことだよね。 |
── |
体調不良でお休みしたりすることもある。 |
慶一 |
そうね。それと先のことはわからない、
っていうことが、どんどん、頭をもたげる。
だからあいまいになる。 |
── |
じゃたとえば鈴木慶一さん自身が
肝心のライブの前に倒れたってなったら
コンサートは慶一さん抜きでも? |
慶一 |
それはできないだろうな。
いや出来るかな。そのへんもあいまいだ。
ただし、すごく気を遣っているよ。
40代前半ぐらいまでそんなこと
考えもしなかったけど、
ふっと考えると恐ろしいことなんだよね。
もちろん楽器が1人いないと
やっぱつまんないんだけど、
リードボーカルをする人が
倒れたとするじゃない、
じゃ違うボーカルでやることも
できるんだよ。 |
── |
理論的には。 |
慶一 |
できる。できるけど
それはあっちゃまずいだろうと思うんだ。
たとえば風邪ひいたとするじゃん、
じゃ札幌の公演だけ
風邪ひいてましたっていうとさ、
札幌の方々だけ体調不良のものを
見せなきゃいけないじゃん。
それはいけないことだなっていうのは
90年代にお芝居やって気付いた。
宮沢(章夫)さんの
「あの小説の中に集まろう」に出て。
気付くの遅いねえ。 |
── |
芝居はそうですね、1人いないともう。 |
慶一 |
だめでしょ。 |
── |
えらいこと。 |
慶一 |
うん、迷惑かかるし。
やっぱり90年代末、
もうほとんど50近くなってからは、
ライブの前は気を遣うようになった。
病気にかんしてはね。
90年代の始めはジョギングなんかしてた。
ライヴ前日に。
でも実はむちゃくちゃなんだよ。
若いバンドの方々のほうが
打ち上げとか早く帰るもの。 |
── |
打ち上げで最後に残っているのは
慶一さんたちのほうだったりする? |
慶一 |
そう。若い人ほど
「明日ライブあるんで」って早く帰る。
俺たちはそんなの気にもせず。
俺たちは年代的に体力がある。
プロなんだから、翌日を考えて、
なんて糞食らえだ。
二日酔いが原因で
歌がダメになったら引退だよ。
ロックンロール!!
|
一同 |
(笑)。 |
── |
過信? |
慶一 |
過信があってバカやっているんだよ。
大丈夫だろうと思って。
一応大丈夫じゃなくなるスレスレは
分かるんだよ。
ギリギリまでバカをやっているんだよ。
バカやるのも大変なんだよね。
寝不足で調子悪けりゃ、
15分仮眠すりゃオッケー。 |
── |
しかし楽器がひとりいないというのも、
見る側としてはつらいですよ。 |
慶一 |
つらいですよ。
やる側もつらいですよ(笑)。
申し訳ないですよ、お客さんに。
でも、それを乗り切ってきた。
二倍一生懸命やりますってね。 |
── |
もっと体調管理してよって思うんだけれど
飲んでるんですね(笑)。 |
慶一 |
そう。その辺はかなり無頼ですよ。 |
── |
ひどく無頼です。 |
慶一 |
なんとかなるやっていう
計算があると思うんだ。
これ以上いくとまずいっていうのがね。 |
── |
それでも夜な夜な飲みに行く理由は? |
慶一 |
俺は相変わらずリスナーだから、
そういう機会を積極的に
求めているのもあるよ。
でもなかなか1人じゃ難しいよね。
そういう友人が周りにいるとか、
そういうバーがたくさんあるとか。
いま一応1、2、3、4軒ぐらい
バーをキープしてあって。
1人で聞くのはいいんだけど、
家で聞くのと違う音楽が
かかっている場所に行く。
ロック喫茶育ちなんでね、
そういう場所に行って
笑ってたり批評してたりするのが好きなの。
その時間は譲れないって感じ。
もちろん家で聞く時間が減っちゃったから
そうやっているっていうのもあるけど。
ここ(自分のスタジオ)に来たら聞くけど、
漠然と自分でアルバムを流すっていうのは
あまりなくなったので
誰かがかけてくれるところに
身をおくわけだよ。
それに常に触れてないと。
結局非常に中心になるのは
音楽なんだなっていうことを
ちゃんと認識し続けるってことだね。
糸井さんと会ったころは
本当にちゃらちゃらしてたから。
マルチなものを求めて
ビデオアーティスト目指したり
いろいろやってましたけども、
やはりいちばん得意なのは
音楽であるということだよね。 |
── |
ライブも行ってますもんね。 |
慶一 |
うん。
ともすると腰が重くなりがちだけど、
軽くさせてくれる人がいるってことだよね。
ともだちが「行きましょうよ」って言うと
「じゃ行こうか」。
そういうともだちが大事だね。
ゆうがた以降に会うフレンドがたくさん。
それはバンドということよりも
外側に大量にある。同期会とか、
高校のとき一緒だったやつとか
サッカーチームの人とか。
例えばサッカーチームに行って
練習終わったあと酒飲んだりするじゃん。
そうすると向こうはなんとなく
もちろんこちらのことを
知っているわけじゃない。
でもそういうの関係ないっていうことで
まずスタートしないと。
関係ないっていう場所が必要だな。 |
── |
関係ない人としていられる? |
慶一 |
完全に関係ない人としている。
普通の人。
これがきっと根底にある、
音楽をやっている特殊性っていうのを
あんまり感じてないということなんだ。
イギリスに何度も行ったときに
ミュージシャンが普通に
街中を歩いたりしているというのは
なかなかよろしい感じで。 |
糸井重里の
言い分 |
でも、ひとつだけちゃんと言いたいのは、
「ダメなあなた」だから好きなわけじゃない、
ということなんだよ。
つまり、その甘さがいいよねっていう人、
だから好きなんだっていうファンも
たくさんいるだろうとは思うけど、
ぼくはちょっと違うんですよ。 |
── |
そんなふうに糸井が言っております。 |
慶一 |
いや、許してくれない方が多いです。 |
── |
そうなんですか。 |
慶一 |
好きと言いながら叩く、
これは傷つきますよ。
それに対抗するには、
甘さなんて感じてるわけにはいかない。
世の中決して甘くはないが、なめて生きたい。 |
── |
たとえばミュージシャンが
ホームページで普通に
日常を書くっていうのも
結構な冒険ではないですか。 |
慶一 |
いや大冒険だよ。
糸井さんが毎日書いているっていうことも
大冒険だったと思うけれど。
ミュージシャンがブログに何か書くのは
「今日あったことを書く」っていう方法も
あるだろうけど、その裏にいろんな意見を
忍び込ませたりするときに非常に気を遣うよね。
それは自伝で書くよ、いつか。 |
── |
自伝! |
慶一 |
60になったら自伝だすよ。 |
── |
60って‥‥わりとすぐですよ。 |
慶一 |
もう書き始めようとしているもん。
(そんなふうに決意しつつ続きます)
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