第4回
いざ墓参り!
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糸井 |
さて、もうすぐお盆ですが、
実は僕、この年になって
お墓参りの作法を知らないのが
引け目なんです。
田舎でちょっと親父の墓に行きたくても、
寺のバアさんに
「来たのに挨拶しない」とか
「なんとか料払っていかなかった」
とか言われたらやだなあ、
とか考えてるうちに、
行きたくても「いいや」ってなる。 |
佐々木 |
それは僕も同じです。
お墓の草を抜く時に、
隣のお墓の草まで抜いていいのか。
以前、隣のを抜いた時には、
「ダメだ」と注意されたんですけどね。
僕たちはとにかく、
そういう墓文化を知りませんからね。 |
糸井 |
長江さん、なんかしきたりがあったら
教えてくださいよ。 |
長江 |
そんなに大層なものはないですよ。
お寺さんであれば、
お金を包まなくちゃ、
ということではなくて、
「来ました」という挨拶は
したほうがいいでしょうけど。
あとは墓参り3点セットを持って・・・。 |
佐々木 |
何ですか、3点セットって。 |
長江 |
お線香にお花に掃除道具ですね。
掃除道具は、茶店に心づけを渡して、
借りてもいいです。 |
糸井 |
たわしとかいるんですか。 |
長江 |
たわしは墓石の表面を傷つけますから、
箒や雑巾ですね。
すごい人は
植木を剪定するハサミを背負って、
うちの前を通り過ぎますよ。 |
糸井 |
墓石の手入れはどうするんですか。
よくお酒をかけたりしますけど。 |
長江 |
お酒は染みになりますからねぇ。
ビール缶なんかもアルミは錆びませんが、
スチールのものは置いたままにしておくと
錆がついて取れなくなるので、
供えたらお持ち帰りいただくとか。
ロウソクも、垂らして
墓石に立たせたりしますが、
あれは油ジミのもと。 |
佐々木 |
うーん。知らなかったなあ。 |
長江 |
石によっても違うんですけどね。
石は呼吸していて、
水を吸ったら吐きますが、
鉄分の多い石は錆が出やすいんです。
友人に石屋の6代目がいて、
彼と一緒にシシリー島に行った時、
その友人、切り出されている石の窪みに
水が溜まっているのを見て、
水を舐めたんですね。
その時、
「こいつはプロだな」
って思いましたね。(笑) |
糸井 |
舐めただけで、
鉄分の多い石かどうかがわかるんだ。
長江さんも墓地を歩いていると、
石のよさとか、わかっちゃうんですか。 |
長江 |
青山墓地に行くと、明治の仕事、
大正の仕事、昭和の仕事とありますが、
すぐにわかります。
うちの八柱霊園でも、
開設直後の昭和10年前後のお墓には、
いいものが多いですね。
昔の仕事には
職人の技が生きていますから、
隣と同じものがない。
龍の口から線香の煙が出てくるお墓とか、
本当にありますからね。 |
糸井 |
へえ〜。 |
長江 |
かつての石屋さんというのは、
墓石だけじゃなく
国会議事堂や都電の敷石なども
扱ったわけですから、
誇りがあるんですよ。
石を切るためには小笠原まで行くとかね。
それが今や大量生産で、
技術面ではむしろ落ちるくらいです。 |
佐々木 |
ちなみに、墓石ってすごく高いけど、
原価はいくらくらいなんですか。 |
長江 |
石自体は自然のものですから、タダです。
だから採掘と運搬が問題になるわけで、
中国の奥地でいい石が出たとしても、
そこまで道をつけることを考えれば、
高くなる。
ただ、原価といった場合には、
掘り出した石の何%を使うかで
違ってきます。
木で言うところの
正目みたいなものにこだわると、
10分の1しか
使わないこともありますから。
一概に原価は何%とは言えないんです。 |
糸井
| そうそう、
石を運ぶのは大変なんですよね。
僕、徳川埋蔵金を発掘しようと
赤城山を掘っている時、
大きな石が出て難儀しましたもん。 |
長江 |
そういう時は
石屋に電話してください。(笑) |
(おわり) |